教員からのレポート Report

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バイオマーカー研究の取り組み

助教 倉岡 睦季(実験動物学教室)

▲本学キャンパス内の桜

 今日までの日は 今日捨て 初桜

 研究において尊敬する恩師から教わったこちらの句を、毎年この時期になるとふと思い出します。江戸時代の女流歌人、加賀千代女が詠んだ句とのこと。
良いことも良くなかったことも、初桜の情景に乗せて気持ちを切り替える。その潔い心機一転の気持ちは、新年度を迎える心構えにも共通するのでしょう。

 さて年度末は、大学では春休み中でも、様々な業務に向き合わなければなりません。
研究に関する報告書の作成もその一つ。年度内に実施した研究をふり返りつつ、この結果は良かった、この辺りはもっとやれたと、一喜一憂もあります。今は省みる時間として、これも研究を進展させるため。

 私が現在取り組んでいる研究テーマの一つは、“バイオマーカー”です。直訳すると、生物学上での指標、となります。見ることが出来ない身体の中でどの様なことが起きているか、バイオマーカーという可視化された目印を用いて調べることが出来ます。

 健康な状態の確認はもとより、病気の検出、病態進行のモニタリング、そして治療効果の評価など、医療・獣医療の現場で欠かすことが出来ません。
健康診断で実施する様々な血液検査項目は、代表的なバイオマーカーです。

▲バイオマーカーとは?

 筋肉が進行性にやせることで筋力低下を招く疾患、筋ジストロフィーを対象にして、新規バイオマーカーの開発を目指しています。
私たちがこれまで行って来た研究では、筋肉の再生度合を示す新規のバイオマーカー、加速度センサを用いて運動の詳細な変化を検出する方法などを報告しました。
バイオマーカーのほとんどは、現在の状態を調べる指標です。非常に難しい部分もありますが、病態の早期において以降の進行の度合を予測するバイオマーカーがあれば、治療計画の設定に大きく貢献できるかもしれない。

 研究はこれまでも、これからも一つ一つの積み重ねです。積み上がったものを大事にしつつ、新たな展開に向けて動き出す、その気持ちを大事にしたいと思います。

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