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牧場だより「継・いのち」

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

第14号:「土・草・家畜の関係」

吉村 格(准教授/牧場長補佐)

2007/9/28 更新
 「牧場」とは、草食動物を放牧して飼うことができる施設をもつ場のことを指す。
 家畜の中で牧場で飼われる対象としては、牛、馬、綿羊、山羊ということになろうか。
 日本のほとんどの畜産農家の経営は、直接収入を得るために家畜の導入から始まった。
 それは必ずしも飼料の生産基盤に立脚した飼養規模ではなかった
 確かに現在の経済合理主義のもとでは、畜産農家の存続条件の一つは1頭でも多くの家畜を飼うことにある。
 富士アニマルファームの運営も、より充実した実習やより良い研究の材料を提供するためにと言い訳しながら、まずは家畜を導入し畜舎内に繋留することから始まった。
 当然のように外国で生産された飼料を餌として与え、管理することが前提となる。
 そのため日々確実に、家畜が食べた分だけの糞尿が堆肥舎に溜まり溢れかえっていった。
 仕方なく十分に発酵していない堆肥を草地に撒くと、瞬く間に土地は荒れてぬかるみとなり、窒素分の影響で草質は悪くなり、「附属牧場」といいながら家畜を放牧することさえ出来なくなってしまった。
 富士アニマルファームではこれらの反省に立ち、自戒の念を込めて専門家を呼んで学生への実習プログラムを立ち上げている。最も重要なことは、従属栄養の生物である「草食動物」は、独立栄養の生物である「草」を食べなければ生きていけないという真理に気づくことである。
 「土」「草」「家畜」の関係を認識した我々は再び学び直そうと思う。特にお金を稼ぐことに直接結びつかない「土」についての勉強は必須である。
 このことが我々に出来る最も早い、地域環境の保全であったり、自然の保護であったり、ひいては地球を守ることの基本になるのではないかと考えている。