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牧場だより「継・いのち」

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

第201号:OPU技術取得に向けての研修会

動物科学科4年次 筒井 ありす

2018/12/14 更新

 10月23日(火)~24日(水)に、畜産技術協会主催の「OPUによる胚生産技術研修会」が行われました。OPUとは、超音波診断装置を使用して牛生体の卵巣を映しながら、卵胞に針を刺して卵胞内の卵子を採取する技術です。ヒトではこのOPUを用いて年間4万人余りの体外受精児が誕生しています。これまでウシでは子宮から胚盤胞を採取していましたが、受精卵をより効率よく生産する方法として期待が寄せられています。今回の研修会には、「OPUをやっているが、自分の手技に疑問をもっている」、「興味があるのでやり方を教えてもらいたい」といった獣医師が関東・東海・甲信越地域から参加しました。

 座学を受講後、体子宮と卵巣を用いてデモンストレーションが行われ、直腸内での卵巣の持ち方や、卵巣への針の刺し方を愛知県山本動物ETクリニック山本広憲獣医師からレクチャーしていただきました。購入した超音波機器のメーカーの杉山先生からは、他社の機器との比較を交えた説明がありました。翌日は、実習牛を用いて採卵実技が行われました。難しいとは言いつつもエコーを見ながら指示どおりに卵巣をうまく動かしているので、さすが経験を積んできている獣医さん達だなと思いました。OPUの先駆者から丁寧に手技を伝授してもらうことが、技術取得と習熟への近道だなと思いました。
 採取した卵胞液の処理と卵子の捜索が私たちの仕事です。いかに素早く丁寧に処理するかがその後の受精と発生に影響するポイントなので、真剣になります。私たちはこの1年間の体外胚生産の研究、人工授精講習会、そしてアニマルファームでのOPU採卵に参加することでこの技術を身に着けてきました。回収した卵子は研究室に持ち帰り、翌日に体外受精を行い培養した結果、なんとか受胎可能な受精卵を生産することが出来ました。
 私たちは、研究室に入ってから体外受精により受精卵を作製してきましたが、その受精卵から子牛を生産するには至っておりません。自分で作った受精卵から子牛の姿になったのを見るのが、今の私の小さな願いです。今回生産した受精卵は今後アニマルファームの牛に移植する予定ですが、無事受胎して産まれてくることを楽しみにしています。

 最後に、今回の研修会の開催にご協力頂きました吉村牧場長はじめ牧場職員の皆様、技術指導して頂いた講師の皆さま、この場をお借りして感謝申し上げます。