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ごく私的な2023年8月〜10月 昼食よりの考察 抜粋その2

教授 太田 能之(動物生産化学教室)

 近年の夏の気温はうなぎのぼりで、40℃に到達しようかという日すら発現する、非常に生命の危機を招きかねない状況で、うっかり無防備に昼食に外出すると、帰ってこられなくなりそうで、さらには食欲が落ち、体温の恒常性への貢献なのかやたら冷たいものを摂取したくなり、文字通り偏食に陥りがちです。

 その場合、外部において採食することにより起こる体温上昇と相まって熱中症のリスクがうなぎのぼりです。それを避けるのに有効な手段の一つがお持ち帰りです。お持ち帰りとして真っ先に思い浮かぶのがコンビニ弁当です。コンビニも様々ございますが、今までの半世紀にわたる弁当人生で脱帽を禁じ得ない水準の弁当を供給し続けているのがコンビニSです。店内調理システムを持つ店舗限定ですが、フライドチキンなどのサイドメニューやおにぎりのレベルも高く、かつ丼、豚丼とうならざるを得ません。ちなみにかつ丼は他のチェーンでも相当水準が高いと感じます。残念なのはメインが北海道の展開のため、関東には数店舗のみ、しかも武蔵境から遠い場所にしか存在しない点です。

 そうなると、関東で同様のサービスを受けようとするとコンビニA一択になります。結構クオリティは高いのですが、帯広名物の豚丼などは、炭火による香りではなく、タレで表現しようという先進的な挑戦に驚きつつも、自分の記憶とのずれに戸惑います。一方で、店内調理のソースカツどんやローストビーフ丼などは文句のつけようのない、まさにナイスです。このように商品によってはあきらめざるを得ないようですが、当たれば大きい出会いが楽しみの一つです。一方で、コンビニCは全体でハイクオリティでありながら価格的にも優位で、かつ血圧の関係で通院している病院の管理栄養士さんもお惣菜を薦めてきます。レンチンラーメンもラーメン屋に発作が起きているケース以外ではいく必要性をなくしてしまうくらいのコスパです。これらに対し、コンビニCは独特の空気感がありますが、卵とじの通常のかつ丼では最も好きなコンビニです。揚げたチキンが有名ですが、あのジャンク感がたまらないですよね。

 ただ、この武蔵境に拠点を構える以上は絶対に忘れてはいけないお弁当屋があります。みなさんよくご存じの心の友といってよい弁当屋です。軒並み弁当は千円以下(というより五百円に近い)なのに、ボリュームと味の両方で妥協無。初心者は唐揚げ弁当を試せばここがどのような場所かすぐ理解できます。現在現役の本学出身の先生方が学生時代から存在し、アニメにも登場するまさに聖地です。カレーがレトルトで、野菜炒めこそ普通感(それでもうまい)がありますが、どれも驚くこと限りなし。上級者になったらステーキ弁当です。見た目は弁当ですが、いただくと強烈にステーキなのです。

 ほかにもテイクアウトが可能な美味な食餌提供店は武蔵境に多数ございますが、当然見合った金額を代価として支払う必要があり、これはこれで当然なのですが、そう思うと心の友の弁当屋の営業努力をこそ、我々は学ぶべきではないかと思うのです。弁当先生です。ただし、一斉にたくさんの弁当を注文すると、お姉さまからご指導をいただくことになりますので、社会常識上の範囲でご活用いただければと思います。

 私のいる研究室(動物生産化学教室)にはいくつかの研究チームが存在しますが、その中には脳班というものがございます。その主は本研究室のもう一人の教員、白石講師です。

 初秋になりますと、各学会の秋季大会が数多く催されます。白石講師は今回、その中の一つの学会でこの脳を絡めた研究を対象として奨励賞を受賞することになりました。そのため、開催地の帯広畜産大学への出張の旅が始まるわけです。

 帯広はこの脳が欲する食に事欠きません。

 とあるデータではマウスやニワトリは摂取栄養素を満たすことを前提として採食量を調整しますが、頭のいいインコは「栄養学的に完璧な食」より「お好み」を優先させます。いままで食べていたものでさえ形を変えるとだめです。サボタージュで対抗します。そういう意味では「お好み」で誘引する食の多い帯広は、白石講師が受賞するにふさわしい街だったといえるでしょう。

 ここで、北海道と帯広、というキーワードと、今回のお題からコンビニSの存在が浮かび上がります。ちゃんといろいろいただいてきましたが、絶対外せないのがフライドチキンです。これは渡道した際にはマストと思ってください。開催期間中、タイムテーブルの関係で帯広豚丼の老舗に伺うことは叶いませんでしたが、開催日の仕出しを除くとすべての昼食をコンビニSの店内調理で賄うことができたのは、及第点ではないかと思ったのです。

 しかし、世の中万事がこのように進むわけではございません。

 学事上の夏季休業に入ると同時に付属牧場での実習が始まります。様々な家畜のお世話などの実習を行うわけですので体力勝負です。身体が資本です。当然食事は重要です。この間とある仕出し屋さんに依存することになります。詳細は割愛いたしますが、過酷な労働にも関わらず、実習を終えて帰京する頃には体重が増えているという特異的な栄養環境下に置かれる期間でございます。これは、脳が求めるものとは異なるというのははっきり認識できるのと、インコのようにサボタージュを起こさないということは我々の知能はそれより劣るということに他ならないのではないかと思う今日この頃なのです。 つづく

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