教授 牛島 仁(動物生殖学教室)
高校では生徒の学習意欲を高める一環として、専門学校や文系・理系の大学の教員を招いた進路相談が企画されています。先日訪問した高校では生徒にアンケートを取り、事前に質問がまとめられ、可能な範囲での回答が求められました。
理系・技術系への進学希望者からは、「高校生の時になりたかった職業」、「推薦入試を前に高校生活で心がけること」といった受験対策よりも、「卒業後の就職状況」、「職業を選択したきっかけと時期」、「希望の仕事に就くためのアドバイス」など、卒業後の進路に興味があるようでした。また、全ての分野に共通する質問としては時代を反映してでしょうか、「勤務時間はブラック?」、「仕事は辛い?」、「年収はいくら?」など、世知辛い質問が寄せられていました。
これらの要望に応えるため、卒業生や関連会社に問い合わせたところ、表向きはカッコよく見えても内情は地味だったり、あこがれの職業でも給料が低かったり、資格が取得できても社会に生かせなかったりする職業が散見されました。
動物科学科は動物好きを動物の専門家にする学科ですが、その特殊性もあってでしょうか、8割が農業あるいは食品に関連する分野に就職します。その中で、農業・食品分野に就職した卒業生の年収は、中央値を超えていることを再確認しました。生徒の興味を引く職業には、安定して給料が良く、男女格差も無い「技術系の公務員」としての進路があります。学科のカリキュラムと動物関連の公務員の試験範囲が一致しているので、決して狭き門ではなく、授業ノートの復習を中心に試験に臨むことで、動物検疫官や研究員への道が開けます。
最近は大学で研究に目覚め、大学院に進学する女子学生も増えました。これからも本学科には、次の時代の生命科学を担い、社会で活躍できる人材育成が求められています。人生100年時代に向け、生命科学分野ではiPS細胞と遺伝子転換技術の臨床応用に舵が切られました。遺伝子導入による難病の治療、「キメラ」技術を用いた臓器生産が始まりましたが、不妊治療の先にある「真の試験管ベビー」は、妊娠・出産の開放に繋がり、期待が膨らみます。新たな産業の創設に伴って多くのビジネスチャンスが生まれ、生命科学分野の卒業生には活躍の舞台が準備されています。