動物生殖学教室 Research and faculty introduction

応用生命科学部/動物科学科MENU
日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

研究室紹介と研究内容

良質な乳・肉を供給するため、動物繁殖分野では優れた雄と雌を交配させることによって産業動物の育種改良が行われてまいりました。また、国内で生産される食品の質の向上、さらなる安定供給そして効率的な生産に向けて、人工授精・受精卵移植・体外受精技術が考案され、動物産業の近代化が行われました。今後の動物生殖学分野には、食品生産にとどまらず、医学や薬学の発展、希少な動物の遺伝資源の保全、さらには新しい産業の発展に寄与することが求められています。そこで、生殖工学的な手法と生命科学で解明された発生・生殖に関する知見とを融合した新しい動物生産が模索されています。当教室では、実験動物(マウス、半野生動物のハタネズミ)と産業動物(ブタ、ウシ)をモデルに用い、受精・発生現象の解明と関連する各種生殖工学技術の開発を行っています。このような研究の展開により、新しい繁殖技術を生産現場に還元(するとともに、高度な専門知識と動物生産に即応できる人材を育成)しています。

教員紹介

牛島仁
  • 氏 名牛島 仁 教授
  • 学 位博士(農学)
  • 専門分野動物生殖学
  • 担当科目動物資源科学概論(分担)、動物繁殖学、動物生殖機能学、動物繁殖学実習、家畜人工授精師養成講習会
研究者情報
岡田幸之助
  • 氏 名岡田 幸之助 准教授
  • 学 位博士(農学)
  • 専門分野動物発生工学、生殖生物学
  • 担当科目動物資源科学概論(分担)、基礎分析化学実習(分担)、動物繁殖学実習、動物発生工学、家畜人工授精師講習会
研究者情報

Close-Up「研究」

体外におけるブタ胚盤胞の効率的作出法の確立

再生医療が脚光を浴びる近年、ブタは臓器の形状や機能等が似ていることからヒトへの一時的な臓器提供動物として期待されています。その重要なステップの一つに、すべての細胞に分化できるブタ胚性幹細胞の樹立が挙げられます。胚性幹細胞を利用できれば、クローン動物作出技術や胚移植などの生殖技術と組み合わせることにより、目的に見合った形質転換細胞や臓器の作出とともに、これら細胞や臓器の安定した供給も期待できるでしょう。利用価値のある胚性幹細胞の樹立には(これまで、ヒト、マウスとサルでのみ樹立されている)、どの動物種でも質の良い数多くの受精卵を準備する必要があります。このため、良質なブタ受精卵の効率的な体外作出法の早期確立が望まれています。
当教室では、前述の応用的な研究に役立つような質の高いブタ体外受精卵や胚の作出を一つの研究目標としています。そこで、私たちは生命の始まりの第一歩となる‘受精’と呼ばれる現象とともに‘受精’に欠かせない生殖細胞の一つ、‘卵子(卵母細胞)’に着目して基礎的な実験を進めています。受精は卵子と精子が結合することで起こり、その後、両者の遺伝情報が組み合わさることで一個体として発生していきます。一方で、体外の実験環境では思い通りにならないことが常です。受精前の卵子の状態が、受精および受精後の胚発生の程度を左右することは以前から知られており、その原因も様々です。このため、‘正常に受精および発生できる(良質な)卵子とは?’というテーマを掲げ、より深く卵子のことを理解しようとしています。卵子の本質を知り、受精機構をしっかり理解できれば、信頼ある応用技術につながると信じて学生共々実験を進めています。

研究

ハタネズミ属の保全-再生法の確立

近年、自然界の絶滅の速度をはるかに上回る速度で動植物が絶滅しており、これによって起こる生物多様性の損失は世界で最も危機的な環境問題のひとつです。生物多様性の損失は、人類が生存していくために必要な生態系の能力を失うことに繋がり、人類の持続的な発展と生活の基盤を脅かすことにも繋がります。この観点から、中・大型の野生希少動物種の保全活動が進められています。一方、地球上に生息している哺乳動物種と動物数においては、げっ歯類が半数以上を占めていますが、このような小型の動物種に注目しての生態環境の維持・修復、種の保全と再生を目指した研究は多くはありません。
ハタネズミ属(Microtus)においても、全64種のうち、すでに3種が絶滅しており、他10種が絶滅の危機に瀕しています。日本固有種のホンドハタネズミ(Microtus montebelli)もその個体数は減少していると推測されており、いくつかの都道府県で準絶滅危惧種に指定されている一方、実験動物としても利用されています。しかしながら、本種の動物遺伝資源としての保存法についてはほとんど研究されていません。ハタネズミ属が有する多様で貴重な遺伝的資源の損失を防ぐことは重要な課題であると考えています。
従来、当教室ではホンドハタネズミ、ロシアハタネズミ(Micortus rossiaemeridionalis)およびユーラシアハタネズミ(Microtus arvalis)の3系統を維持・管理し、これらの生殖活動に関して基礎的なデータを蓄積してきました。ハタネズミの特徴を理解するとともに、これまで実験動物や産業動物で培ってきた発生工学的技術を駆使して、ハタネズミ属における保存法および再生増殖法を確立すべく、日々学生とともに実験に取り組んでいます。

ネズミ

学生からの一言