動物栄養学教室では、家畜を主な対象動物として、その生産性の向上ならびに持続可能な生産に対して、栄養学の側面からアプローチし、教育研究活動に取り組んでいます。また、我が国の畜産は厳しい状況にあり、様々な課題があり、その一部に次のようなことがあります。当研究室では、これらの解決につながる教育研究に取り組んでいます。
【課題】
1.家畜の飼料(穀物)は、人の食料と競合しいている(世界的な食料問題)。
2.わが国では、家畜生産のための穀物飼料の大部分を輸入に依存している(飼料自給率の低下)。
3.国内最大の肉用種、黒毛和種による牛肉生産では、牛肉の多様性が失われている。
家畜を対象とした研究では肉用家畜、特に肉用牛について、その機能を活かした肥育技術の開発から、多様な牛肉生産に関する研究に取り組み、また、自国での飼料生産を推進するため、地域飼料資源の飼料化に関する研究開発を行っています。肉用牛の肥育は、試験研究機関や生産者と連携を図りながら実施し、研究レベルから現場で活用できる技術開発に取り組んでいます。さらに、付属農場である富士アニマルファームにおいても肉用牛生産に関する教育研究の充実を図るため、施設整備に取り組んでいるところです。また、生産効率や肉質の向上を目的に、飼養環境が肉生産に及ぼす影響について分子レベルでの研究に取り組んでいます。
肉用牛の肥育は、濃厚飼料多給が慣行的な肥育となっていますが、反芻獣としてのウシの機能を活かし、飼料イネや牧草サイレージなど粗飼料の給与、あるいは放牧を取り入れた肥育に取り組んでいます。こうした肥育牛の牛枝肉形質および肉質の分析を行い、飼養環境が牛肉質におよぼす影響を明らかにし、慣行肥育とは違った肥育方法を開発し、多様な牛肉生産に関する研究を進めています。
肥育は骨格筋を効率よく成長、太らすことであり、肉用牛の慣行肥育ではこれらが確立しています。一方、飼料イネなどの粗飼料を多給あるいは放牧を取り入れた肉用牛肥育では、必ずしも効率の良い骨格筋の成長が期待できるものではありません。このため、これらの肥育牛において、飼養環境の違いが骨格筋の成長あるいは肉質へ及ぼす影響を探索するため、筋肉内の骨格筋形成に係る遺伝子発現を測定し、そのメカニズムを明らかにするとともに、これらの情報を活用した新たな肥育技術の確立に向けた研究に取り組んでいます。
我が国で最も飼養されている肉用種である、黒毛和種去勢牛に対して、ホルスタイン種やブラウンスイス種などの乳用種および黒毛和種経産牛などの肉用牛の肥育が行われています。これらの枝肉形質ならびに肉質の分析から品種ごとの特徴を明らかにし、より適切な飼養環境について検討しています。
国内での飼料自給率の向上のため、食品の製造過程あるいは農産物の生産過程で廃棄される副産物について、飼料として有効活用するための研究に取り組んでいます(エコフィード)。また、この取り組みは、飼料会社等の大型施設のみではなく、小規模ロットでも対応可能な、省力化による飼料調製法の開発を目指しています。
肉用牛の哺育・育成期では、疾病、事故を起こすことなく終えることは、その後の肥育を考えると重要な時期となります。こうしたことを考慮しながら、効率的な肥育あるいは肥育目標に合致した肥育素牛(もとうし)生産のための研究に取り組んでいます。