動物育種とは動物を遺伝的に改良することにあり、品種改良とほぼ同じ意味であります。動物の品種改良のための理論と技術向上を目的とする学問です。
当研究室では対象を動物、特に産業動物を中心として動物の遺伝的能力あるいは適性を最大限引き出し、畜産物の供給を通じて人類の生活に役立てようとしています。遺伝子と現場を直結して複合的に科学しています。
哺乳類においては畜産技術を利用した人工授精、体外受精、胚操作技術を利用したクローン動物作出による個体復元が試みられています。しかし、鳥類は卵黄が非常に多いことから胚操作技術は哺乳類に比べ遅れています。そこで、注目されるのが後代に遺伝子を伝達する始原生殖細胞(Primordial Germ Cells: PGCs)です。遺伝子保存という観点から始原生殖細胞を利用した生殖腺系列キメラ鶏の研究を行っています。
ニワトリの生産現場において、肉用鶏の成長に大きな個体差が生じることが問題となっています。家畜の産肉性はタンパク質合成遺伝子やタンパク質分解遺伝子などの遺伝子発現量によって左右され、その発現量の違いによって個体差が生じることが知られています。また遺伝子発現量は一塩基多型(SNP)によって大きく影響されることについても知られています。肉用鶏の生産に関わる遺伝子解析をしています。
キメラとは、異なる二つ以上の遺伝子セット、あるいは異なる種の細胞を持つ個体のことを言います。私たちは顕微鏡を用いて、孵卵した卵の始原生殖細胞を、別の卵に移植することにより生殖腺系列キメラ鶏を作製しています。移植技術の取得には時間がかかり、苦労することも多いです。しかし、自分で工夫して実験する楽しさがあり、やりがいを感じられます。
研究室の雰囲気はとてもアットホームでメリハリもあるためイベントごとにも積極的に参加しています。
日本人は白玉より赤玉、薄い色よりも濃い色の卵を好みます。濃い卵を作ることは養鶏家の収入の向上に繋がります。そこで、私たちは鶏の卵殻色素に着目し、卵殻表面への色素沈着について遺伝子レベルで研究を行っており、実際に鶏に触れて実験を行います。本研究室は落ち着いた研究室であるため、静かに勉強を行うことができます。また、先生と学生の距離も近いため、相談しやすい環境でもあります。