環境因子は動物の生理機能に様々な変化を与えます。例えば、光の照らす時間(日照時間)は繁殖活動の開始や終わりを伝えることができます。多くの動物は自らの概日時計(光周時計)をたよりに脳で日照時間を読み取り、決まった時期に産卵や出産、育児に備えています。一方、光の色(波長)は、成長を促進したり、行動を制御したりすることができます。すなわち、動物の生理機能は、日(光)の長さや波長によっても変化します。別の環境因子の温度は、胚の発生にもかかわっています。これら光や温度、概日時計が動物にもたらす影響の理解は、動物の発生から繁殖や成長促進の制御に繋がり、産業動物の生産性の向上のみならず飼養管理に応用できると考えられます。
また、脳は、上述の環境因子や概日時計などの外部環境の情報を集約するだけでなく、神経系や内分泌系を介して内部環境の情報を集約、処理し、それらの情報をもとに身体の機能を調節しています。繁殖機能もその一つです。繁殖機能は、おもに脳の視床下部と下垂体、そして性腺(卵巣や精巣)が、緻密に連絡をとりあうことによって行われます。また、繁殖の成立には、性腺の活動(メスでは卵胞発育や排卵、オスでは精子形成)に合わせて、適切な交尾行動を起こすことが重要です。こうした、ほ乳類における繁殖が成立するためのメカニズムの解明は、ウシやブタなどの家畜の生産効率の向上に資する新たな繁殖制御法の開発に繋がることが期待されます。さらに本研究室による研究成果は、ほ乳類全般に共通する知見であるためヒトの生殖医療のための改善にも応用できると考えられます。
私たちは、生理学や、神経内分泌学、分子生物学や遺伝子工学、行動学などの手法を用いて、環境因子や概日時計が動物の生理機能に及ぼす影響や繁殖機能の制御メカニズムの解明を目指して日々研究を行なっています。
(1)季節繁殖を制御する脳機能に関する研究
(2)LED単波長が動物の生理機能に及ぼす影響
(3)ニワトリ胚の発生停止と再開に関する研究
(4)授乳期における脳機能に関する研究
(5)ニホンウズラの卵殻模様の親子相関について
(6)雌雄の性行動を制御する脳機能に関する研究
(7)メスの卵胞発育・排卵を制御する脳機能に関する研究