教員からのレポート Report

応用生命科学部/動物科学科MENU
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発生学のススメ

教授 牛島 仁 (動物生殖学教室)

 全国の農業就業者数はこの60年で1/10の140万人まで減少し、国内の食料自給率も40%を割り込み、ともにV字回復できない状況が続きます。一方、文科省の調査によると、理系の履修者数、中でも内容が高度化した生物離れが問題となっています。とりわけ社会生活の中で農業と接する機会が希少になった昨今、農学離れは深刻です。政府は新規就農者や高度技術者の人材育成を求めていますが、このような問題に対応することも大学の重要な使命です。これまでに大学で生命科学を学んだ卒業生は、農業や医療現場の第一線で活躍しています。

 優秀な動物の生殖細胞をオスから採取して人工授精することにより、牛のほぼ100%、豚で60%の産子が生産されるようになりました。卒業生は、受精卵移植技術や体外受精技術を用いて国内の10%に相当する年間約10万頭の黒毛和種を生産することにも貢献しています。関連する発生工学の技術は、野生動物の保護や動物園動物の維持にも応用されはじめています。

 「初の体外受精児誕生」から程なく半世紀になりますが、農学出身で生殖技術を習得した胚培養士が国内外で活躍しています。国内では少子化の影響もあって、今では10人に1人、年間7万人を超える赤ちゃんが誕生しています。試験管ベビーや人工子宮の開発は、女性の社会進出を後押しします。また、細胞培養や遺伝子治療などの高度な生命科学に関わる研究開発は、人生100年時代に欠かせない技術として注目されています。このように畜産の繁殖学から派生した哺乳動物の発生学は、生命科学で産物を創る分野を担当しています。

 前任の友金先生から教室を預かり、この3月で岡田先生に引継ぎます。16年間ありがとうございました。

▲牛の人工授精師




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