教員からのレポート Report

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ジビエと獣害

教授 小澤 壯行(システム経営学教室)

 ちまたでは「ジビエブーム」らしく、シカやイノシシの肉を食することが人気のようです。しかしジビエは必ずしも美味しいとは限りません。ウィキペディアによれば、ジビエとは「狩猟によって、食材として捕獲された野生の鳥獣を指し、フランス語である。畜産との対比として使われることが多い。狩猟肉。」と記載されています。まさに私たち動物科学の学問領域で取り扱う「食肉」とは対極に位置づけられているのがジビエなのでしょう。

 私は学生諸君にこう教えています。「皆さんが美味しい鹿肉、英語ではヴェニスン(Venison)を食べたいのならば、ニュージーランドの輸入鹿肉を買ったらいいですよ。世界で一番、養鹿業(ようろくぎょう)が盛んな国だからね。高さ2mのフェンスで放牧地を囲い、効率的な経営が行われているんだ。品質管理も万全ですし。ジビエはヴェニスンとは違うんだよ。狩猟で得た肉だから個体の状況によって味は大きく異なるんだ。例えば狩猟シーズン当初のシカやイノシシは大きくて脂がのっていて美味しい。でも、厳冬期で食べ物が少ない季節になると痩せてしまって肉が少なくなってしまうんだよ。あと、オスとメスの違いもあるね。繁殖期のオスジカ肉は独特の臭いがあって、あまり好きじゃないなぁ。」果たしてこの説明で学生が理解してくれたかどうかには一抹の不安を覚えますが、どうも一般の方にもこの手の誤解が生じているようです。

 さて私は「趣味は狩猟です」と豪語し、実益を兼ねて有害鳥獣駆除の「担い手」確保を研究対象の一部としています。毎週末は猟銃をかついで猟犬を用いた「巻き狩り」を楽しんでいる日本でも稀な「猟師研究者」です。そこで気づかされたのが、どうやら私たち「猟師」が野生鳥獣対策の担い手として過度に期待されているようなのです。実際、野生鳥獣は都市部にも進出しており、必ずオレンジ色のベストと帽子を着用した私たち猟友会メンバーがテレビ画面に映し出されています。でも「猟師」だけがその役割を担わなければいけないのでしょうか?またなぜ「猟師」の数が少なくなっているのでしょうか?実はマスコミがあまり伝えない「現実」があり、この課題解決に狩猟現場から実証的にアプローチしています。

 受験生の皆さんにあっては、どうぞ本学へ進学してこの課題に一緒に取り組んでみませんか?また私が創設し、顧問を務めている「狩猟同好会」もあります。共に語り合いましょう。お待ちしています。

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