教員からのレポート Report

応用生命科学部/動物科学科MENU
日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

富士アニマルファームで和牛肥育やってます!

教授 柴田 昌宏(動物栄養学教室)

 本学は山梨県富士河口湖町に付属牧場、富士アニマルファームを所有しています。この牧場は通称、アニファと呼んでいて年間を通して多くの実習や研究が行われています。今回は、ここで実施している和牛の肥育(牛を肥らせて牛肉を生産すること)について紹介いたします。いま行っている肥育は黒毛和種経産牛の肥育です。

 経産牛についてご存じでしょうか。経産牛は、繁殖牛として繁殖能力が低下したお母さん牛のことです。この牛は1次生産として、これまでに多くの子牛を出産し、次のお母さん牛(後継牛)や肉を生産する牛(肥育牛)、これらの素となる牛(素牛[もとうし])の生産に貢献してきました。しかし、繁殖牛も年齢と共に子牛の生産性の低下や分娩事故のリスクが増加するため、定期的に世代交代(更新)します。こうした牛を対象に第二の牛生を歩んでもらうのが、この経産牛肥育です。

 この肥育は、通常行われている輸入穀物飼料を大量に食べさせる(多給)肥育ではなく、ウシ本来の姿、草食獣としての機能を活用したものです。具体的には、アニファの近くで生産されたトウモロコシについて、この子実から茎、葉までの全てを飼料として活用します。さらに、本学がある武蔵野市の地ビール工房から排出され、廃棄されることも多いビール粕を飼料原料として利用しています。こうした飼料を約半年間、経産牛に食べさせ、肥らせ牛肉を生産してもらいます。まさに繁殖牛の2次生産です。

 地域で調達できる飼料及び飼料資源を積極的に活用し、これらを牛に食べさせ、その排泄物からなる堆肥を土壌へ戻す、まさに地域資源循環を取り入れた経産牛肥育です。また、本来は捨てられる食品製造副産物の活用は、フードロス対策となるだけでなく、飼料自給率の向上にもつながります。これらの飼料の多くは、ヒトが栄養素として利用できず、食材とならないものです。穀物はウシなどの家畜の飼料となりますが、一方で、ヒトの食料でもあります。この取り組みは、穀物を多給する従来の肥育とは異なり、穀物の給与量を抑えることで、世界的な食糧問題の解決につながると考えています。

 少し話が大きくなりましたが、こうした経産牛について肥育を行わず、そのまま屠場へ直行と言った考えが学内外にあります。確かに余分な飼料代もかからず、管理する手間も省けるかもしれません。一方で、資源をあまり持たないわが国にとっては、経産牛も大切な資源です。この経産牛についてヒトが利用できない原料で肥育を行い、少しでも付加価値を得ることができれば、繁殖牛は牛生を全うでき、ヒトはその恩恵を受けられます。

 こうした経産牛の肥育をアニファスタッフの協力を得ながら、学生と共にアニファ内にある、富士セミナーハウスに滞在し、行っています。この肥育は今年3月から開始し、9月の肥育終了を予定しています。肥育終了後は、屠畜し、牛肉となります。この牛肉は本学初の牛肉として、またその生産コンセプトと合わせて、多くの方に認知され、大学発のブランドの一つになればと期待しています。

 ところで、この牛肉はどこで食べられるの?と思われている方! 今年の医獣祭(学園祭)で食べる機会を設けたいと、計画しています。医獣祭は10月末から11月上旬の週末にかけて開催しますので、ぜひお越しください。ここでは紹介しきれないこの取り組みについて、牛肉を食べながらお話しできればと考えています。




【関連ページ】

【バックナンバー】