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本学卒業生が日本獣医病理学専門家協会(JCVP)
優秀論文賞を受賞しました!

 今春、3月29日麻布大学で開催された日本獣医病理学専門家協会(JCVP)学術集会において、本学獣医病理学研究室卒業生の岸田一輝氏(本学2009年卒、現大阪大学大学院医学系研究科博士課程4年)がJCVP優秀論文賞を受賞しました。この賞は、2007年に制定され、日本獣医病理分科会若手会員の研究意欲向上のためにその年に出版された応募論文の中から理事の投票により一編を選出し、その筆頭著者に副賞として10万円を授与するものです。岸田氏は7人の応募者の中からこの賞に選出されました。本学出身者としては初めての受賞です。

 受賞論文[Investigation of the roles of fascioliasis and food allergy in intrahepatic eosinophilic proliferative pylephlebitis in Japanese Black cattle. The Veterinary Journal;196(2013),160-166]は、黒毛和種の肝臓にみられる好酸球性静脈炎の原因について肝蛭寄生と食物アレルギーの可能性を検討したものです。この病気は黒毛和種に好発し(発生率約0.5%)、臨床症状が顕著でないため、ほとんどが食肉検査時に見出されています。従来、肝蛭症の非典型的病変と言われてきましたが、この研究では病理形態学的および血清学的根拠から肝蛭症とは関連性がなく、むしろ食物アレルギーとの関連性が高いとの結論に到りました。

 この研究は岸田氏の学部生時代の卒論テーマでした。彼は形態学的手法だけで満足せずに、塚田准教授の指導を仰ぎながら、血清学的手法を用いてこの病気の原因解明に果敢に挑戦した結果、今回の新知見を得ることができました。6年生は正月を過ぎれば、目前の国家試験のための勉強一途というところですが、彼はその頃になっても、まだこの実験を続けていました。心配になり声をかけると「実験は気分転換にもなるし、面白い結果が出れば勉強の励みにもなります」との返事が返ってきました。国家試験合格後の春にも、彼は、第147回日本獣医学会学術集会(JRA主催)でポスター発表を行い優秀賞に選ばれています。今回の受賞は、彼自身にとっても大きな励みになり、新たな飛躍に繋がると信じています。

 また、この研究のため貴重な材料を提供して下さった山形県内陸食肉衛生検査所ならびに岩手県食肉衛生検査所の方々に改めて御礼申し上げます。

(病態獣医学部門 病態解析学分野 獣医病理学研究室 髙橋 公正)