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【新着論文】イヌの軟骨肉腫から同定されたイソクエン酸脱水素酵素1の新規変異

論 文 名:
Novel canine isocitrate dehydrogenase 1 mutation Y208C attenuates dimerization ability
和訳)イヌIDH1の新規変異Y208Hは2量体形成能を減弱させる
著  者:
川上翔太(獣医保健看護学専攻大学院生) 落合和彦(獣医学科、生命科学総合研究センター)
掲載雑誌:
Oncology Letters, 2020 20(6): 351
Spandidos Publications
Open access
DOI: 10.3892/ol.2020.12214
研究内容:
 イソクエン酸脱水素酵素(IDH)は、クエン酸回路でイソクエン酸からα-ケトグルタル酸を合成する酵素です。ヒトの脳腫瘍の一種、神経膠腫(グリオーマ)では、IDH1遺伝子の変異が高率で見つかることが知られています。本論文では、イヌの軟骨肉腫でIDH1の変異を発見したことを報告しています。今回見つかったY208C変異は、イヌIDH1の208番残基がTyrosine(Y)からCysteine(C)に変化するヘテロ接合性のミスセンス変異でした(図1)。このY208C変異がIDH1の機能におよぼす影響を in silico、in vitroおよびin vivo手法を用いて検討したところ、本来二量体を形成して機能するIDH1の二量体形成能が大きく損なわれることが分かりました(図2)。それに伴いイソクエン酸脱水素活性も顕著に減弱することも明らかとなりました。このような機能変化はこれまでにヒトでも検証された例は無く、イヌの腫瘍関連遺伝子研究により初めて報告されました。

■研究者情報

・落合和彦(獣医学部獣医学科 獣医衛生学研究室・准教授)