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【新着論文】麻酔処置したマウスの保温処置時間ってどのくらい必要?
― 動物福祉に配慮した適正な動物実験を行っていくために ―

論 文 名:
Durations of thermal support for preventing hypothermia induced by anesthesia with medetomidine-midazolam-butorphanol in mice
和訳)3種混合麻酔薬によるマウスの体温低下を防ぐための適切な保温処置時間の策定
著  者:
田代瑞穂,細川由貴,天尾弘実,藤平篤志(動物科学科・実験動物学教室)
掲載雑誌:
The Journal of Veterinary Medical Science, 2020 Dec 82: 1757-1762.
The Japanese Society of Veterinary Science.
DOI: 10.1292/jvms.20-0256.
研究内容:
 私たちの研究室(動物科学科・実験動物学教室)では、動物実験の基本理念(Reduction:減数, Refinement:苦痛軽減, Replacement:置き換え)である「3Rsの原則」を推進するため科学的根拠に基づき、動物福祉に配慮した適正な動物実験の条件に関する研究に取り組んでいます。今回は、「3Rsの原則」のうち、Refinement:苦痛軽減に重要な麻酔処理に関する研究論文を紹介します。
生命科学領域の研究では動物を用いた試験は避けて通れず、医薬品や農薬の開発には動物実験が必須となります。動物実験を行う際には、出来る限り動物に苦痛を与えないため、麻酔薬の使用は必要不可欠です。麻酔薬の適切な使用や麻酔薬投与後の保温処置は、環境省の「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛軽減に関する基準」の第4-1-(1)にも記載されており、動物福祉に配慮した適正な動物実験を実施していくために保温処置を含む麻酔条件の設定は慎重に検討する必要があります。麻酔処置後、一般的に動物は麻酔薬による影響から体温が低下します。特に、実験動物で最も多く使用されるマウスは体が小さいため、より体温の低下が顕著であることが知られています。したがって、術中および術後の保温処置は必須とされていますが、適切な保温処置時間に関する具体的な報告はありません。実際の研究の現場では、麻酔投与からマウスが麻酔から覚醒するまでの1時間程度の保温処置をすることが多く、“覚醒したら大丈夫”と多くの研究者が思い込んでいます。本論文では、特に体温低下が著しいと予想される3種混合注射麻酔薬をマウスに投与した場合、マウスが覚醒した後も長時間にわたって低体温状態にあることを明らかにし、加えてこの低体温状態を阻止するには5時間以上の保温処置が必要であることを示しました。筆頭著者の田代瑞穂君は大学院博士後期課程の2年生ですが、学部の卒論時からこの研究を続けていて、これまでに学会、研究会で6回の発表を行っており、2年連続で日本実験動物学会総会の若手優秀発表賞の候補者になっています。この研究内容は特に実験動物技術者から注目されており、田代君の発表には多くの聴衆が集まってくれますが、これまで学会発表してきた一部を学術論文として発表したものが本論文です。

■研究者情報

・藤平篤志(応用生命科学部動物科学科 実験動物学教室・教授)