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【新着論文】肺高血圧症に苦しむ患者(イヌ)の右心室収縮機能を心エコー図検査でより正確に評価する

論 文 名:
Utility of tricuspid annular plane systolic excursion normalized by right ventricular size indices in dogs with postcapillary pulmonary hypertensionability
和訳)後毛細血管性肺高血圧症罹患犬における右心室サイズ指標で補正した三尖弁輪収縮期移動距離の有用性
著  者:
湯地 勇之輔1)*、鈴木 亮平1)、手嶋 隆洋1)、松本 浩毅1)、小山 秀一1)
1)日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科 獣医内科学研究室(*大学院生)
掲載雑誌:
Journal of Veterinary Internal Medicine. 2021;35:107-119.
Wiley
Open access
doi: 10.1111/jvim.15984.
研究内容:
 肺高血圧症は肺動脈圧の上昇を特徴とする難治性疾患であり、右心機能障害や右心拡大、右心不全を引き起こすリスクがあります。三尖弁輪収縮期移動距離(TAPSE)は肺高血圧症の病態評価において一般的に用いられている右心機能指標の1つです。しかしながら心エコー図検査による既存の右心機能指標は、肺高血圧症の病態進行に伴う外的負荷(静脈還流量や三尖弁逆流など)による影響で正確な評価とならないことが危惧され、近年は右心機能指標を右心系サイズで補正することで負荷に依存しない病態評価が試みられています。そこで我々は、イヌにおいて最も一般的な心疾患である僧帽弁疾患に続発した肺高血圧症の犬を対象に、右心機能指標であるTAPSEについて、様々な右心系サイズで補正した新しい心エコー図指標による病態評価を試みました。本研究において、TAPSEは特に最大右心室内腔径や右心室面積で補正することで非補正値では認められなかった重度な肺高血圧症の犬における有意な悪化を認めました。さらに、これらの補正指標は右心不全の早期検出にも有用である可能性が示されました。

■研究者情報

・鈴木亮平(獣医学部獣医学科 内科学研究室・助教)