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日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

【新着論文】放射性セシウムを含む大豆から作った豆腐を水に浸けておくと放射性セシウムが豆腐から抜けてゆく

論 文 名:
Elution of Radioactive Cesium from Tofu by Water Soaking
和訳)水浸漬による豆腐からの放射性セシウムの溶出
著  者:
吉田充1)、甲斐野仁美1)*、設楽沙織1)*、知久和寛1)、八戸真弓2)、濱松潮香3)
1)日本獣医生命科学大学応用生命科学部食品科学科 食品安全学教室(*学部学生)
2)国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
3)国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構本部
掲載雑誌:
Food Safety – The Official Journal of Food Safety Commission, 2020, 8(3), 55-58
doi: 10.14252/foodsafetyfscj.D-20-00011
研究内容:
 2011年3月の東日本大震災に伴い発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質によって土壌や森林、海が汚染され、それによる農畜水産物の汚染が問題となりました。厚生労働省では事故直後の3月17日に、日本人の各食品の摂取量をもとに、食品の汚染率を50 %と仮定して、飲料・食品からの年間被ばく線量の上限値を5 mSvとした場合に、この上限値を上回らないように野菜類・穀類・肉・卵・魚等に含まれる放射性セシウムの暫定規制値を500 Bq/kgと定めました。さらに、2012年4月1日には、年間被ばく線量の上限値を1 mSvに引き下げて、一般食品における新たな基準値100 Bq/kgが施行されました。保存・加工・調理前の食品の原材料にもこの基準値が適用されています。この基準値による農畜水産物の出荷の規制と監視に加えて、汚染農地の除染や放射性セシウムの作物への吸収低減対策、放射能の自然減衰により、農畜産物の放射性セシウム濃度は極めて低くなっており、基準値を超える放射性セシウムを含む農畜産物が市場に出回ることはありません。一方、基準値を決める際の基礎のひとつとなる食品からの被ばく線量をより正確に推定するためには、実際に私たちが摂取する加工・調理された食品の保存・加工・調理工程における放射性セシウムの動きを調べる必要があります。
 大豆から豆腐を作ると、放射性セシウムの一部が大豆の浸漬水やおからに移行することは既に報告されています。そこで本研究では、2011年に福島県内の試験圃場で収穫された156 Bq/kgの放射能を有するセシウム-137を含む乾燥大豆から豆腐を作製し、それを様々な条件下で水に浸し、セシウム-137の水への溶出と、それにともなう豆腐中のセシウム-137の存在量の変化を調べました。
 セシウム-137を含む乾燥大豆から豆腐を作製した時の豆腐へのセシウム-137の移行率は28 %でした。その豆腐を、冷蔵庫内での保存を想定し、豆腐の質量の2倍量の水に浸して24時間4℃で保存したところ、豆腐から水へのセシウム-137の移行率は45 %(浸漬前の豆腐のセシウム-137に対する割合)でした。4倍量に水量を増やしてもこの移行率に有意な変化は認められませんでした。湯豆腐を想定して、豆腐中心部の温度が80℃まで上昇してそれが30分維持される状態を保つべく、80℃で50分浸漬を行うと、セシウム-137の水への移行率は28 %(浸漬前の豆腐のセシウム-137に対する割合)でした。水量を豆腐の質量の10倍まで増やしてもこれ以上の移行は認められませんでした。このことから、セシウム-137の豆腐の内部から外部の水への拡散は制限を受け、一部が豆腐内にトラップされていると考えられます。このセシウム-137を豆腐内部にトラップする物理・化学的要因の解明は今後の研究課題です。しかし、下図にあるように、豆腐を2倍量の水に4℃で24時間浸漬後、その水から出し、新しい2倍量の水に入れて80℃で50分加熱すると、原料の乾燥大豆から見たセシウム-137の残存率は11 %となり、原料の9割のセシウム-137が除去できたことになります。

■研究者情報

・吉田充(応用生命科学部食品科学科 食品安全学教室・教授)
・知久和寛(応用生命科学部食品科学科 食品安全学教室・講師)