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【新着論文】牛トロウイルスN蛋白質の核輸送がウイルス増殖に必須であることを明らかにしました

論 文 名:
Characterization of Localization and Export Signals of Bovine Torovirus Nucleocapsid Protein Responsible for Extensive Nuclear and Nucleolar Accumulation and Their Importance for Virus Growth.
和訳)牛トロウイルスヌクレオカプシド蛋白質の核・核小体蓄積に関与する核内・核外移行シグナルの特性評価とウイルス増殖に対するそれらの重要性
著  者:
氏家誠1、2)、河内悠華子2)*、松永惟2)*、江藤由佳2)*、浅沼秀樹3)、神谷亘4)、田口文広2)
1)日本獣医生命科学大学生命科学総合研究センター
2)日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科 獣医感染症学研究室(*学部学生)
3)国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター
4)群馬大学大学院 医学系研究科
掲載雑誌:
Journal of Virology. 2021 Jan 13;95(3):e02111-20.
American Society for Microbiology
doi: 10.1128/JVI.02111-20.
研究内容:
 牛トロウイルス(トバニウイルス科)は世界中に蔓延し主に仔牛の下痢の原因となっています。しかしながら、抗ウイルス薬やワクチンは未だ開発されていません。牛トロウイルスは、以前はコロナウイルス科に属しており、見た目も性質もコロナウイルスによく似ています。トロウイルスやコロナウイルスはゲノムの特徴から プラス鎖RNAウイルスに分類され、これらのウイルスは細胞質で増殖する事が知られています。このため、ウイルスのカプセルを作る蛋白質(構造蛋白質)は細胞質に運ばれ、細胞質でカプセルが組み立てられます。ところが、牛トロウイルスの構造蛋白質のうちヌクレオカプシド(N)蛋白質だけは、主に核内に輸送されることが分かりました。これは、全てのプラス鎖RNAウイルスの中でも非常に珍しい性質です。そこで、N蛋白質がどのようなシグナルを使って核に運ばれているのかを詳細に解析し、さらに、N蛋白質の核輸送がウイルス増殖に必須であることを人工ウイルス合成法を使って証明しました。これらの研究成果は、N蛋白質の核輸送を標的とした新たな抗ウイルス薬開発につながることが期待されます。

■研究者情報

・氏家誠(獣医学部獣医学科 獣医感染症学研究室・准教授)