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犬の脳腫瘍治療に負担の少ない新たな方法を見出すための研究プロジェクトのクラウドファンディングを開始します(4月10日~5月31日まで)

 4月10日(月)から5月31日(水)まで、長谷川大輔教授(獣医学部獣医学科 獣医放射線学研究室)を代表とする「犬と飼い主の負担を減らすために。脳腫瘍治療に新たな一手を!」プロジェクトのクラウドファンディングを行います。

 近年の獣医療では高度医療化、犬の高齢化に伴い、脳腫瘍や診断・治療される事例が増加しています。犬の脳腫瘍発生率は人よりも高く、治療は主として外科手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)等によって行われており、飼い主にとっても患者犬にとっても負担が大きいものです。そこで今回、飼い主、患者犬ともに負担の小さい新たな脳腫瘍治療を見出すため、クラウドファンディングを開始いたします。

≪プロジェクトについて≫
  犬の脳腫瘍は、良性腫瘍であれば手術単独で治療が完了することもありますが、悪性の場合や良性であっても切除が不完全な場合、手術後に放射線治療を組み合わせる事が一般的です。しかし、人のような保険制度のない獣医療では脳外科手術(100~150万円)と放射線治療(50~100万円)には相当な費用がかかり、経済的・精神的な負担となります。また、患者である犬にとっても放射線治療では頻回(1週間に3~5回)な全身麻酔が必要になるため、身体的・精神的負担は相当なものです。

 人の悪性脳腫瘍では手術で腫瘍をある程度取り除いたあと、いくらか取り残されている腫瘍がある空間に、抗がん剤であるカルムスチン(BCNU)の徐放剤を置いてくるという方法があります。このカルムスチン脳内留置剤はすでに人の治療で用いられていますが、犬での使用報告は全くありません。
 しかし、このカルムスチン脳内留置用剤が犬でも安全かつ有効であることが判れば、手術後の放射線治療をうまく行けば回避、あるいは放射線治療までの期間を引き延ばすことが可能となります。
 また、犬でのカルムスチンの有効性は不明であるものの、カルムスチンと同じニトロソウレア系であるロムスチン(経口投与薬)やニムスチン(静脈内注射薬)は犬の脳腫瘍に有効であることが知られています(ただしこれらは全身投与となるため、骨髄抑制などの強い副作用が出ます)。

 そこで今回、犬の脳腫瘍手術時にこのカルムスチン脳内留置用剤を併用することで、その有用性と安全性を評価しようという研究プロジェクトを考案しました。しかしながら上述のように、犬での安全性や有効性は全く不明であり、またその薬剤の価格も非常に高価なものとなります。加えて、犬での安全性と有効性は犬の脳腫瘍患者でしか評価することができません。
 そのため、寄付で集まった資金でカルムスチン脳内留置用剤を購入し、今回のプロジェクトの趣旨に飼い主からの理解・賛同を得られた脳腫瘍患者犬の手術で使用し、評価することを目的に、寄付型クラウドファンディングを立ち上げることとなりました。
 このクラウドファンティング・研究プロジェクトが成功し、カルムスチン脳内留置用剤の有効性と安全性が示せれば、今後の犬の脳腫瘍治療に新たな一手を加えることができるとともに、患者犬と飼い主のさまざまな負担を軽減できると予測されます。

 なお、今回のプロジェクトは長谷川教授を代表とし、国内で犬の脳腫瘍外科を行っている複数の大学および動物病院との共同研究となります。そのため、北海道から本州の各地でこの手術+カルムスチン脳内留置用剤による治療を受けることができます。

≪クラウドファンディング概要≫
 ■「犬と飼い主の負担を減らすために。脳腫瘍治療に新たな一手を!」
 【募集期間】
  2023年4月10日(月)~5月31日(水) 52日間
 【第一目標金額】
  180万円
 【URL】
  https://readyfor.jp/projects/k9braintumor
 【資金使途】
  カルムスチン脳内留置剤の購入
 【形 式】
  寄附金控除型/All or Nothing形式
 ※All or Nothing形式は、期間内に集まった寄付総額が目標金額に到達した場合にのみ、実行者が寄付金を受け取れる仕組みです。
 ※本プロジェクトへのご寄付は日本獣医生命科学大学へのご寄付となり、税制上の優遇措置が受けられます。