【新着論文】ブラックベリーの継続的な摂取は脳虚血障害を軽減する
- 論 文 名:
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Impact of daily administration of blackberry extract on gerbil model of transient cerebral ischemia
(和訳)ブラックベリー摂取の脳虚血スナネズミに対する神経細胞保護効果 - 著者:
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小田朝陽、菅井和久、藤澤正彦、袴田陽二、小林翔、小林英司
獣医保健看護学科・生体機能学研究分野 - 掲載雑誌:
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Acta Cirúrgica Brasileira, 2024 Sep 9:39:e397424
Sociedade Brasileira para o Desenvolvimento da Pesquisa em Cirurgia
DOI: 10.1590/acb397424 - 研究内容:
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日本獣医生命科学大学・獣医保健看護学科・生体機能学研究分野の小田朝陽(修士2年)と袴田陽二教授らは果実であるブラックベリー抽出物(BB)の継続的な摂取は、脳虚血負荷後に起こる神経細胞死を軽減することを明らかにしました。BBはポリフェノールを豊富に含むヒトの健康食品の一つとして飲用されています。一般的に継続的な健康食品の摂取は、不足する栄養分の補充を介して体質改善に効果があるとされています。しかしBBの継続的摂取中に生じる偶発的疾病に対する効果とそのメカニズムについては明確ではありませんでした。
今回、BBの偶発的合併症の重症化の予防ならびに治療効果を検証するために、毎日繰り返しBBを摂取しているスナネズミに一過性脳虚血を負荷した際の、BB投与の神経細胞死に対する抑制効果を検討しました。BBは、我が国における一大生産地である青森、株式会社「天の川」(樋口和美 代表)と小林再生研究所・合同会社(代表、小林英司CEO)との共同研究に基づくものを使用しました。実験に使用した砂ネズミは、加齢とともに高コレステロール血漿を示す動物で、脳虚血実験によく使用されますが、BBの継続的な投与は、付加的に誘導した脳虚血による海馬CA1領域の神経細胞死を軽減しました。一方、脳虚血後に治療としてBBを投与してもその効果は認められませんでした。
(文責:袴田 陽二)
継続的なブラックベリー(BB)の摂取は突発的な脳虚血負荷後に起こる神経細胞死を軽減できることが判明しました(図-1)。一方、脳虚血負荷後にBBを摂取してもその効果は認められませんでした(図-2)。BBには豊富なポリフェノールを含有し、その抗酸化作用が神経細胞死の抑制に貢献しているものと考えられます。
現在、健康増進や不足する栄養素を補う目的で数多くの健康食品が市販され、利用されています。しかし、その効果に関して、必ずしも科学的に証明できているわけではないものもあります。今回の研究においても、BBが有する抗酸化作用が脳虚血後の神経細胞死の抑制に貢献しているものと思われますが、脳虚血負荷後のBB摂取による直接的有効性が認められていません。BBは薬のような服用の容量設定が明確ではありませんが、BBによる神経細胞死の抑制効果には未だ解明されていないメカニズムが存在する可能性があります。 健康食品は長期にわたり服用することが多く、その安全性の担保が重要です。さらに高齢者は無症候性の脳虚血を生じることが知られていますが、健康食品の継続的な服用は、偶発的に発症する疾患に対しての重症化予防に関する研究が発展することが期待されます。