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牧場だより「継・いのち」

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

第18号:継ぐ「笑顔」

吉村 格(准教授/牧場長補佐)

2007/12/27 更新
 我々の幼稚な善意でも人様のお役に立てることがあったらと蛮勇を奮い起こし「ふれあい交流会」の開催をお引き受けした。今回は、厳しい環境を背負って日々の生活を精一杯に暮らしておられる障害者と介助者の人達約40名を招いて、畜産の現場を知ってもらおう、できたら喜んでもらおうと、(財)すこやか食生活協会と地元行政である富士河口湖町、そして我々富士アニマルファームの三つ巴でお世話をさせてもらった。
 問題点も多く噛み合わせの悪い企画だと思って実施したが、来場した彼らの無邪気で、屈託のない、無防備な『笑顔』とそれを支える介助者の本物の暖かさに包まれて、富士アニマルファームは忽ち幸せの坩堝と化した。日頃から我々の肩に重くのし掛かっている現場の鬱積した疲れと愚痴とは雲散霧消し、逆に彼らに励まされている自分を感じた。肥大化した欲望と摺り合わせるのではなく、それぞれの不便さと折り合って、与えられた条件の中で充足して常に今を生きる彼ら。世間に対する謙虚さと、自分よりさらに重い障害を持つ仲間へのさりげない気遣い。そこから生まれるのであろう彼らの『笑顔』。
 「成長することは美しい、成長しようとする心こそが人間らしい」と、自己を制限せずに可能性を限定しない生き方で満足や達成感を得ようした我々の人生の試みは、最初からボタンの掛け違いであったのかもしれないと彼らと同じ空間を共有して気づかされた。現世の天使たちに我々はどこまで近づくことができるだろうか。まずは彼らの『笑顔』を富士アニマルファーム発の『笑顔』として継がせてもらいたいと考えている。