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牧場だより「継・いのち」

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

第49号:ドンピシャリ!5大乳用種の子牛達

吉村 格(准教授/副牧場長)

2010/2/9 更新
 この写真、ナント富士アニマルファームでの出来事である。私には夢のような光景である。実に壮観で見事である。まさかここでこんなことまで出来るとは思っていなかった。世界の5大乳用種といわれるカワイイ子牛たちと笑顔の可愛い学生達との集合写真である。それだけでも満足しなければならないが、最高のポーズを決めようと牛たちの側で指示を出し制御する学生達の闊達な姿には驚嘆した。大学の付属牧場としてはこれ以上求めるものはないだろう。もう既にここは私の能力では十分の域に達していると思う。
 富士アニマルファームは搾乳規模が32頭の比較的小さな牧場であるが、昨年末から今年にかけて分娩ラッシュであった。理由は昨年の種付けが春先に集中したことによるが、牛たちももって生まれた宿業というものがあることを知っているのだろうか、どうしても分娩時期に偏りが生じてしまう。ちょうどその中に前号の「付属牧場便り」で紹介した世界の5大乳用種の全品種が含まれていて、実験のためにやってきた学生達にせっかくの機会だから一緒に写真に納まってくれるようにとお願いした。
 今後10年間、全国の酪農家、日本津々浦々の牧場に至るまで、このような写真は絶対撮れるはずがない、と学生達に大言壮語しながら写真を撮った。有り難いことにシャッターチャンスもドンピシャリ、素晴らしい写真になった。出来上がった写真は、彼女達が年齢を重ねても使わしてもらうことの了解を得て、「このスマートな女の子がお母さんだったのよ。ホント若いときには牛にも負けていたんだからー。嘘じゃないからー」と青春時代の1日を思い出す貴重な写真になるだろうことも請負してしまった。
 このような写真を掲載すると、いつものことではあるが全国から「欲しい欲しい」の大合唱が始まる。可能な限り子分けをしてあげたいと思うのだが、皆が欲しいものがそう簡単に我が富士アニマルファームだけで殖えていくものではない。しかも雌の確率はその半分である。私たちも繁殖管理には大変な苦労を重ねてきたのである。今回の分娩ではガーンジー種以外は全て雌であった。繁殖学の牛島教授からは「ガーンジーの受精卵を回収し、雌雄判別した後に移植しましょうよ」と甘言を囁かれているが、科学の世界に身を置きながら私の考え方はまだ宿業というものから十分には解放されていないのである。