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牧場だより「継・いのち」

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

第107号:生産獣医療と代謝プロファイル試験
~富士アニマルファームでの取り組み その1~

水谷 尚(講師)

2014/05/02 更新
最近、牛の獣医療では生産獣医療という言葉を良く耳にします。この言葉は1990年代後半に作られた用語で、英語ではproduction medicine(プロダクションメディスン)と言われているものです。獣医師には、病気や怪我を負った動物を医療技術によって助けるという大切な仕事がありますが、特に生産動物を扱う場合、これと同時に別の大きな仕事を行っています。それは、適切な飼育法が行われているかを判断して、動物の健康状態を向上させるという仕事です。これを行うことによって、農家は生産能力が上がり、生活の安定につながります。また、社会に対しても安心で安全な畜産物を提供していくということに?がります。このように農家の生産性を診療の対象にした獣医療を生産獣医療といいます。
生産獣医療のニーズは年々高まってきています。実際に、生産獣医療を主な仕事として開業している獣医さんも増えてきています。そんな中、私たち日本獣医生命科学大学でもこの生産獣医療に対する取り組みを行っています。その1つが、私たちの行っている代謝プロファイル試験という事業です。
代謝プロファイル試験とは、その農家で飼育されている牛の血液検査を行い、血液から栄養状態や代謝の状態を診断して、適切な生産が行われているかを判定するものです。
本学における代謝プロファイル試験は、2012年度より始まりました。このプロジェクトは静岡県東部農業共済組合(NOSAI静岡県東部)の事業をバックアップする形で行われています。大学が受け持つ仕事は、血液検査の大部分と結果の解析です。NOSAIの獣医師とともに酪農家を訪れ、採血を行い、その血液を分析して得られた検査データと、その他の情報、例えば、「どれくらいお乳を出しているのか」「妊娠しているのか」「分娩からどれくらいの時間が経っているのか」など多くの情報と合わせて解析を行います。実際には、血液検査を行う以上に、事前の情報収集がとても重要な仕事に成っています。その部分、ほとんどがNOSAIの担当獣医師に行ってもらっているわけですから、その苦労は計り知れないものと思います。
さてこのようにNOSAI静岡県東部の担当獣医師と共同で行っている代謝プロファイル事業ですが、この仕事において、情報収集から血液サンプルの処理まであらゆる部分で拠点となっているのが富士アニマルファームです。実際に試験が行われる日には、牧場内の実験棟はまさに前線基地と化します。その具体的な内容については次号でお話しすることにしましょう。