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牧場だより「継・いのち」

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

第108号:生産獣医療と代謝プロファイル試験
~富士アニマルファームでの取り組み その2~

水谷 尚(講師)

2014/05/14 更新
本学では2012年から代謝プロファイルを実施しています。その活動拠点として、富士アニマルファームを活用しています。実際には牧場内にあるハイテクリサーチセンターという実験室のある建物を利用しています。私たちの富士アニマルファームでは「教育」「研究」「生産」「社会貢献」の4つの指針を掲げていますが、そのうちの「社会貢献」に相当する活動になりますし、ゆくゆくは「教育」や「研究」にも役立てていけそうな活動です。
さて、代謝プロファイルテストが行われる日の様子ですが、その日は午前中から作業が始まります。まずは、サンプリングの準備と打合せをNOSAI静岡県東部の担当獣医師と行います。当然、その日に使う機材の準備も行いますが、それ以上に重要な作業は、採血する牛を選ぶ作業です。通常、代謝プロファイル試験では、農家が飼育しているたくさんの牛の中から、30頭選出して採血をします。この時、この30頭がその農家の状態を反映している平均的な牛たちでなければなりません。乳牛は一頭ずつその能力に大きな差があります。特にお産をしてからの日数によってお乳を出す能力が大きく変わります。代謝プロファイル試験の時は、事前に「お産からの日数」「妊娠しているかどうか」「次のお産までの日数」「どれくらいお乳を出しているか」など牛の個体情報を細かくチェックして、同じような条件の牛が固まらないようにしながら、その酪農家の状況を反映するような30頭の牛を選定しなくてはいけないのです。この作業、実際にはとても大変な作業なのですが、私たちの場合、NOSAIの先生が事前にやっているので、当日は再確認程度の作業ですみます。あらためてNOSAIの先生が農家のために尽力する姿に感服いたします。
さて、いよいよ午後から現場に向かいます。富士アニマルファームから近い酪農家で行われることが多いのですが、これまで三島、函南、御殿場といった地域でも実施しました。農家でのサンプリングは1時間から2時間程度、対象となった30頭の牛から採血すると同時に、栄養状態を1.00から5.00まで0.25刻みのスコアで評価します。他にも、事前調査から変化したことがないか、牛舎の様子は、搾乳システムの様子はなどなど、調査や聞き取りを行ってから富士アニマルファームに戻ります。
戻ってきてからは、その日サンプリングした検体や情報の整理を行うことになります。この作業にはNOSAIの獣医師だけではなくNOSAIの職員の方も加わっていただくことが多く、賑やかな中にも緊張感のある時間となります。こうやって得た血液サンプルは、本学動物医療センター検査室または一部を外部の検査機関に送り、詳細に分析されることになります。また、牛の個体情報も整理され、分析用にコンピューターにまとめられます。
全てのデータが揃い、情報の解析が終わるまで、少し時間を頂いて、日を変えて酪農家さんに結果を報告に行きます。酪農家さんには、血液データから牛の状態、生産の状態について、良い点や改善すべき点を踏まえて解説します。そして総合的に飼育管理状態に関するディスカッションを行い、さらなる生産性アップを図ってもらうことになります。さて、私たちが行っている解析で酪農家さんがどれだけ役に立っているのでしょうか、あるいは酪農家さんの経営が少しでも良くなり、安心で安全な牛乳をより多く生産できるようになっているのでしょうか。その結果が見えてくるのはもう少し先になりそうですが、酪農家さんに対してより適切な情報が提供出来るよう努力していきたいと思います。