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新任教員インタビュー:生野 佐織先生

獣医保健看護学科広報委員会

 本年4月に獣医保健看護学科 応用部門 疫学・公衆衛生学研究分野に着任された生野 佐織(しょうの さおり)助教をご紹介します。生野先生は平成25年3月に本学科を卒業(第5期生)後、本学大学院 獣医保健看護学専攻博士前期・後期課程を修了されて博士号を取得されました。幅広い知識と高度の専門性が必要な疫学・公衆衛生学の領域に、認定動物看護師としての新しい視点から挑もうとされています。

【自己紹介をお願いします】

 はじめまして。4月より獣医保健看護学応用部門 疫学・公衆衛生学研究分野の助教に着任致しました、生野佐織と申します。平成30年3月に獣医保健看護学科の博士号を取得しました。私は本学に入学するまで動物を飼育した経験はありませんでしたが、小さい頃から動物に触れる機会が多く、動物が大好きで動物に関わる仕事がしたいと思い日獣大に入学しました。動物の中でも特に猫が好きで、学部3年生の頃から茶トラの猫の魅力に惹かれ、現在は14歳になる茶トラの猫と一緒に暮らしています(もちろん犬もその他の動物も好きです)。

【学生時代はどのような研究や活動を行ってきましたか?】

 学部生時代は、体高の異なる犬に歩数計を装着して歩数を測定しながら、同時に体に溜まる乳酸や消費エネルギーを測定することで、それらが健康な犬の運動指標になることを見出しました。
 大学院では、イヌの糖尿病や代謝についての研究を行ってきました。血糖値が高く、インスリン治療を必須とする糖尿病犬の生活の質を向上することを目指して、インスリン治療とあわせて行う血糖値を下げると言われる運動療法や薬物療法に着目しました。糖尿病犬が運動(散歩)を行う、またはヒトの糖尿病患者に使用されているGLP-1受容体作動薬を投与することで、糖尿病犬でも血糖値が低下するのか、また、その他の血液性状や胃内容排出時間にどのような影響を及ぼすか研究してきました。さらに、消化管通過時間の測定法の確立やイヌの歯石に関する研究など、その他の研究を行うことで多くの分析技術を学んできました。
 研究以外でも、健康な犬猫はもちろんのこと、糖尿病や様々な疾病に罹患した犬猫の動物看護を日常的に行い、犬猫のハンドリング、血液検査および疾患についてなど動物看護師の基礎的な技術および知識を身に着けました。また、研究室や付属動物医療センターおよびアルバイト先の一般動物病院で動物と接している中で、命について深く考える機会があり、犬猫から命について多くのことを学ばせて頂きました。

【獣医保健看護学領域において公衆衛生学はどのような位置付けにありますか?】

 公衆衛生は、人間集団を対象として、疾病の予防、健康の保持・増進ならびに福祉の向上をはかり、人に人としての肉体的・精神的・社会的機能を適切に発揮させることを目的としています。公衆衛生学の範囲は広く、環境衛生、食品衛生などの領域にもおよびます。獣医保健看護領域では、特に動物の関与する公衆衛生が重要となり、動物のプロフェッショナルとなる動物看護師が身につけておかなければならない知識が多くあります。例えば、動物病院では、人の健康を脅かす人獣共通感染症、感染動物の取り扱い、医療廃棄物の処理、手術器具の滅菌など、衛生に関する知識が必要であり、疾病を予防する方法などを飼い主様に分かりやすく説明できることが重要となります。本研究室では、人獣共通感染症や食品、環境衛生に関する研究を行うのはもちろんのこと、動物介在療法など人の精神的ケアに関する研究や動物のストレスに関する研究を行い、動物と人の生活の質の向上を目指した研究を進めています。卒業生たちも、動物病院だけではなく、動物検疫所、食品関連会社、各種検査会社などに就職しており、幅広い分野で活躍しています。
(詳しくは研究分野紹介を参照→疫学・公衆衛生学研究分野

【今後の抱負を聞かせてください】

 動物と人の健康被害の予防、また動物や人の精神的な問題の解決やサポートのために、動物看護師だからこそ力を注ぐべき公衆衛生の課題に取り組み、また介在療法分野の研究や教育に誠心誠意努めていきたいと思っております。また、動物看護師としてこれまで得た知識を生かして、様々な領域で幅広く活躍できるような学生と大学院生の育成に努め、動物看護学の発展に寄与したいと考えております。さらに、勉学だけでなく、人生で一度しかない大学生活が楽しくなるような学生生活のサポートをしていきたいと思っています。どうぞよろしくお願い致します。