食のいま

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第76号:戦後における食品産業の変化-食品小売業編-

 戦後、私たち日本人の食生活は大きく変化しました。具体的には、かつての「主食(ご飯)+汁物(味噌汁)+おかず(和惣菜)」というシンプルな形から、現在では主食に小麦製品が増えたことに加えて、おかずも品数が多くなり、内容的にも洋風化が進むなど多様化しつつあります。そして、それと並行して、食生活を支える食品産業も大きく変容しながら現在に至っています。このため今回は、食品産業のなかでもスーパーを中心とする食品小売業を取りあげて、その変化を概観したいと思います。

 さて、皆さんや皆さんのご家族はどこで食品を購入しているのでしょうか。この問いには多くの方がスーパーマーケット(以下「スーパー」という)と答えたことでしょう。しかし、食品小売市場におけるスーパーの登場はそんなに古いことではなく、諸説ありますが1950年代以降とされています。そして、スーパーの登場以前は町中の商店街にある専門小売店が小売業の中心であり、消費者は米、野菜、果実、水産物、精肉、加工食品などの品目別店舗を廻りながら購入していました。そして、これら専門小売店の多くは零細な家族経営であり、各店舗が取り扱う商品の品揃えも限られたものでした。

 しかし、現在はどうでしょう。スーパーにも様々な形態がありますが、一般的な食品スーパーであってもその品揃えは豊富であり、消費者は最寄りの店舗に行けば必要な食料品のほぼ全てを購入することができます。また、価格や品質についてはどうでしょうか。食品スーパーの多くは多くの店舗を展開するチェーン店であり、同一ブランドの店舗であれば価格や品質は統一されています。このような販売が可能になる理由として、スーパー本部が仕入先と価格交渉しながら大量購入することで安定的な仕入が行えることや、大量輸送を通じて物流コストを削減している点があげられます。また、店舗においてもセルフサービス方式を取り入れることで人件費等の削減が図られています。以上から、食品小売業におけるスーパーの拡大により、私たちの消費生活は安定化しただけでなく、便利かつ豊かになったことは明らかでしょう。

 近年はスーパーだけでなく、ドラッグストアや100円ショップ、さらにはネット通販が拡大するなど食品の小売市場は多様化しつつあります。これらの小売業者は、今後も相互に補完・競争しながら私たちの食生活をより良く変えていくのではないでしょうか。