ルックス重視の近親交配に対して警告して終わる本書には「終章」がある。“犬は人間みたいだとほめられても、なぜなのかわからないし、ありがたいとも思わない。彼らは、犬でありたいのだ”――この一節は胸を打つ。
人間は、犬が人に似ているから愛するのか? そうではない筈だ、という著者の希望は“他者を理解するというのは、決して自らにひきつけて考えることではない”という強烈な主張でもある。参考文献をいちいち読み解く専門的知識がない筆者には、本書の科学的価値は判断できない。が、本書が、「科学」とはいったい何のためにあるのか、を示していることぐらいはわかるつもりだ。
本書の原題は”The Truth About Dogs”である。