教授 柴田昌宏(動物栄養学教室)
コロナ禍に関する話題が多い中ですが、富士アニマルファーム(山梨県、以下、アニファ)で新たな取り組みをスタートさせましたので紹介いたします。アニファでは、持続可能で多様性のある牧場の構築を目指しています。これまでアニファでは、乳牛を中心とした数々の素晴らしい研究が実施されてきました。一方、ここ最近では肉牛を使った研究は実施されていません。多様性を目指す牧場の第一弾として、動物栄養学教室では和牛の哺育試験に新たに挑戦しています。
この試験はどういった試験なのか?紹介します。簡単に言うと、生まれた子ウシを人工哺育でトラブルなく早期に離乳させ、丈夫な育成牛を生産する試験です。この時期の子ウシは、下痢等の疾病を起こしやすいため、この予防目的および成長促進を目的に抗生剤がミルクに添加されてきました。しかし、最近ではこうした治療目的外での抗生剤の投与が規制されつつあります。そこで、抗生剤に代わる物質を添加したミルクを子ウシへ給与し、その効果を確かめる研究を企業と共同で実施しています。抗生剤に代わる物質とは?気になる方もいますね。今ここでは、教えることはできませんが、これは一部のヒト用の粉ミルクにも含まれている成分で、その成分表にも記載されています。ヒントは生物由来の物質です。興味のある方は、探してみてください。候補物質が分かった方は、下記のアドレスまで必要事項を書いて連絡してください。
こうした試験を牧場長はじめ、アニファスタッフならびに産業動物臨床学教室などに協力いただき、動物栄養学教室では実施しています。供試牛1頭の飼養期間は、離乳までの約2ヵ月間です。この間、当教室から大学院生を中心に学生が、東京を離れアニファに滞在して、その飼養管理にあたっています。この試験は、供試頭数が多いことから、今年6月から開始し、今年度いっぱいを予定していますので、アニファへお越しの際は、試験の様子をぜひ見に来てください。