食のいま
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第4号:「肉料理のある食卓風景①-表示義務の大切さ-」

 多くの日本人は宗教行事をあまり取り込まないで日常生活をおくっています。しかしながら、国や地域によっては、日々の活動に濃厚に宗教的儀式を取り入れるスタイルの生活を送っている人々がいます。特に毎日の「食」に関する宗教的戒律は、その宗教信仰者にとっては重大な関心事です。

 以前、閉店まぎわのスーパーで買い物をしていると、挽肉のパックを指さして「コレハ牛肉デスカ?」と聞いてきた東南アジア系の青年がいました。「インドネシアからの留学生か・・・・、とすると豚肉を食べないイスラム教徒の可能性が高いな」と勝手に推察しながら、その挽肉パックが牛肉のみの商品であることを告げ、また、「肉コーナーのここからここまでが牛肉で、中央は豚肉で、そして残りのはじっこが鶏肉よ」と案内し、「ドモ、アリガト」と真っ白な歯をのぞかせて笑顔で去ってゆく青年の後姿を見送ったことがありました。


 一般的に、イスラム教では豚肉を、ヒンズー教では牛肉を食べることを禁止しています。“牛肉コロッケ”と書いてあれば、「よもや豚肉は使われていまい」と考えるのが普通であって、もしあのときの歯の綺麗な青年が、その製品を口にしていたら、どうなってしまうだろうかと、心を痛めています 。