研究内容
獣医学的手法を駆使することで、異常(病的状態)の解析から正常(生理的状態)を明らかにすると言うコンセプトで研究を行っています。具体的にはオリジナルのラット突然変異系統を用いて、その病態解析、原因遺伝子の同定、疾患モデルとしての意義付けを行っています。最近では同定された原因遺伝子の細胞レベルでの機能を分子生物学的な手法を用いて解析しています。以下に主要系統をリストします。
1. | hypogonadism (HGN): 細胞分裂中期の紡錘糸形成に関わる微小管結合タンパク質astrinの機能喪失変異により、雄でセルトリー細胞の分裂異常による精巣形成不全、雌で卵巣低形成による早期不妊、雌雄で腎低形成による進行性の腎機能不全を呈する。 |
2. | Lethal dwarfism with epilepsy (LDE): 抗腫瘍因子として同定されたWwoxの機能喪失変異により、神経系の発達障害、特に髄鞘低形成を示し、てんかんや発育障害を発症する。小児WOREE症候群のモデルである。 |
3. | Osteochondrodysplasia (OCD): 細胞内小胞輸送や一次繊毛形成に関わるgiantinの機能喪失変異により、全身性皮下水腫を伴う致死性骨軟骨形成不全を呈する。軟骨細胞での細胞外基質の産生・分泌異常を認める。 |
4. | Diabetes with enlarged kidney (DEK): 雄のみに糖尿病が発症し、発症個体は顕著な腎実質の増大を示す。発症直後の片側腎摘出が糖尿病の発症を阻止するため、腎実質の増大が糖尿病を引き起こしている可能性がある。 |
5. | その他の系統: 胸腺低形成を伴う矮小(PET)、片側性泌尿生殖器異常(UUA)など。 |