獣医病理学

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日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

指導教員名:塚田 晃三
職位:教授
学位等:博士(医学)
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KAKEN 研究者番号:90304930
ORCID ID: 0000-0002-4998-8895
主たる研究テーマ:
1) 腸内環境とアトピー性皮膚炎発症メカニズム
2) 犬の個別化がん免疫療法の基礎および臨床研究
研究キーワード:アトピー性皮膚炎、腸内細菌叢、
犬がんワクチン、犬MHC class I型
場所:D棟3階 獣医病理学研究室
e-mail: tkd-oks ● nvlu.ac.jp
※●を@マークに変換してください。

研究内容

1) 腸内環境とアトピー性皮膚炎発症メカニズム
 NC/Nga系SPFマウスを用いたデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性腸炎により、アトピー性皮膚炎(AD)を発症することがわかり、このモデルから腸内細菌叢とAD発症との関係を調査しています。抗炎症薬でDSS誘導性腸炎を抑制した場合や、腸内環境を整えた場合に、AD発症を軽減できることがわかりました。これまでの文献では、ヒトの統計学的解析で腸炎とAD発症との因果関係は示唆されていましたが、メカニズムは不明でした。今後、このモデルを用いて腸炎からAD発症の機序解明を目指します。
2) 犬の個別化がん免疫療法の基礎および臨床研究
 がんワクチンは、皮内接種により、がん抗原特異的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導して、がんを効率よく殺すことを期待した方法です。最終的にがんを排除するためには、いくつかの段階をクリアする必要があります。先ず、①がん細胞に標的抗原の1つであるsurvivinが発現しているか、②がん抗原を提示する樹状細胞のMHC class I型(犬ではDLA-88型)に合わせたsurvivinの一部の断片(9個のアミノ酸配列)がワクチン用がん抗原として準備できるか、③がん抗原(survivinペプチド)を樹状細胞に効率良く取込ませるための手段(アジュバントの選択)は最善か、④CTLが誘導できても、腫瘍内で疲弊化(腫瘍細胞にPD-L1が発現してCTL活性が抑えられている状態)になっていないか、⑤繰返しワクチン接種することでCTLが不応答(トレランス)に陥っていないか、などがあり、これらを回避する手段を治療プログラムに構築する必要があります。現在有する技術を駆使して、大学附属動物医療センターにて犬の臨床研究を実施しています。

指導方針

[実験技術の指導]
マウスを用いた実験では、動物福祉(Animal welfare)の倫理に基づいた方法で飼育および実験に供し、遺伝子改変マウスの系統維持の繁殖・飼育法を学び、マウス保定法、麻酔法、ゾンデ経口投与、採血、静注、皮下注、腹腔内注射などの技術を学ぶ。安楽殺後に、リンパ節、脾臓など採取後に細胞浮遊液を作製、マグネット抗体を用いて細胞を分離する。同時に各種臓器の採材、厚紙に貼付けてホルマリン固定後、病理組織検査用に標本作製し鏡検する。細胞株の培養維持法、腫瘍細胞株のマウス移植後のワクチン接種法など学ぶ。解析では、蛋白質、RNA、DNAを抽出した後、ウエスタン・ブロット解析、RT-PCR解析、シークエンス解析、また培養細胞ではフローサイトメトリー、ELISA法、細胞増殖解析、細胞傷害性活性解析などを用いる。

[論文作成の指導]
先ず、論文用の図を作成し、方法と結果をまとめる。図の内容から新しい知見とその意義をまとめ、要約する。関連文献を検索して国際的状況を調べ、関連情報を提供し、本研究の重要な点をアピールする。最初は日本語でもよく、自身でまとめ上げられる様に訓練する。
[経済的配慮への指導]:様々な奨学金を紹介し、学振の特別研究員に採用される様に指導する。

主な学術論文

1.Konnai M, Takahashi K, Machida Y, Michishita M, Ohkusu-Tsukada K.
Intrahepatic eosinophilic proliferative phlebitis in Japanese black cattle indicate allergies involving mast cell tryptase-dependent activation.
Front Vet Sci. 2022. 9:972180.
2.Ohkusu-Tsukada K, Yamashita T, Tsukada T, Takahashi K.
Low expression of a Ddm7/Ldm7-hybrid mutant (D/Ldm7) in the novel haplotype H-2nc identified in atopic dermatitis model NC/Nga mice.
Genes Immun. 2019. 20(1):74-81.
3.Ohkusu-Tsukada K, Ito D, Okuno Y, Tsukada T, Takahashi K.
Signs of atopic dermatitis and contact dermatitis affected by distinct H2-haplotype in the NC/Nga genetic background.
Sci Rep. 2018. 8(1):2586.
4.Ohkusu-Tsukada K, Ito D, Takahashi K.
The role of proteasome inhibitor MG132 in 2,4-dinitrofluorobenzene-induced atopic dermatitis in NC/Nga mice.
Int Arch Allergy Immunol. 2018. 176(2):91-100.
5.Ohkusu-Tsukada K, Ohta S, Kawakami Y, Toda M.
Adjuvant effects of formalin-inactivated HSV through activation of dendritic cells and inactivation of myeloid-derived suppressor cells in cancer immunotherapy.
Int J Cancer. 2011. 128(1):119-31.
6.Ohkusu-Tsukada K, Toda M, Udono H, Kawakami Y, Takahashi K.
Targeted inhibition of IL-10-secreting CD25- Treg via p38 MAPK suppression in cancer immunotherapy.
Eur J Immunol. 2010. 40(4):1011-21.
7.Ohkusu-Tsukada K, Tominaga N, Udono H, Yui K.
Regulation of the maintenance of peripheral T-cell anergy by TAB1-mediated p38 alpha activation.
Mol Cell Biol. 2004. 24(16):6957-66.