研究内容
1) 腸内環境とアトピー性皮膚炎発症メカニズム
NC/Nga系SPFマウスを用いたデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性腸炎により、アトピー性皮膚炎(AD)を発症することがわかり、このモデルから腸内細菌叢とAD発症との関係を調査しています。抗炎症薬でDSS誘導性腸炎を抑制した場合や、腸内環境を整えた場合に、AD発症を軽減できることがわかりました。これまでの文献では、ヒトの統計学的解析で腸炎とAD発症との因果関係は示唆されていましたが、メカニズムは不明でした。今後、このモデルを用いて腸炎からAD発症の機序解明を目指します。
2) 犬の個別化がん免疫療法の基礎および臨床研究
がんワクチンは、皮内接種により、がん抗原特異的な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導して、がんを効率よく殺すことを期待した方法です。最終的にがんを排除するためには、いくつかの段階をクリアする必要があります。先ず、①がん細胞に標的抗原の1つであるsurvivinが発現しているか、②がん抗原を提示する樹状細胞のMHC class I型(犬ではDLA-88型)に合わせたsurvivinの一部の断片(9個のアミノ酸配列)がワクチン用がん抗原として準備できるか、③がん抗原(survivinペプチド)を樹状細胞に効率良く取込ませるための手段(アジュバントの選択)は最善か、④CTLが誘導できても、腫瘍内で疲弊化(腫瘍細胞にPD-L1が発現してCTL活性が抑えられている状態)になっていないか、⑤繰返しワクチン接種することでCTLが不応答(トレランス)に陥っていないか、などがあり、これらを回避する手段を治療プログラムに構築する必要があります。現在有する技術を駆使して、大学附属動物医療センターにて犬の臨床研究を実施しています。