研究内容
診断技術の進歩にともない積極的な治療が展開されるようになってきました。しかし、対象臓器に対する正しい診断に基づく治療が必ずしも全身的な病状を改善できない場合もあります。そのため、私たちは臓器連関に注目しています。例えば、腸疾患が起源となる場合には経口的な抗原の体内侵入が容易となり、過剰な抗原抗体反応を引き起こし腸内毒素の腸管外への流出による全身的な炎症状態を惹起させます。また、心疾患による心拍出量の低下は、腸管への血液還流量を減少させ、その結果として腸管のバリア機能が低下し、炎症物質や炎症惹起物質を血中へ流出させてしまいます。そのため、炎症促進性の脂質メディエーターであるエイコサノイドあるいはレゾルビン、プロテクチンそしてリポキシンなどの炎症収束性脂質メディエーターの基質となる長鎖脂肪酸の変動に注目しています。また、腸内バリア機能維持に重要な因子である腸管内の短鎖脂肪酸の濃度や腸内細菌叢のバランスと全身状態の関係について調査しています。さらに、臓器連関疾患で生じている酸化的障害である酸化ストレス状態を酸化ストレス度と抗酸化能から潜在的酸化ストレス度や相対的酸化ストレス度を算出し、それらの数値を検討しています。
講師の鈴木を中心に心エコー図法を用いた心機能評価の研究も行っています。心不全の病態評価には主に左心系がフォーカスされており、右心系の重要性は十分に認識されていません。また、ヒト医療においては心疾患の診断に心カテーテル検査やMRI検査が頻用されていますが、獣医療ではそれらの検査には全身麻酔を必要とするため実用的な検査方法となっていません。そのため、イヌやネコの心臓病に対して非観血的で麻酔の不要な心エコー図法の有用性についてモデル動物や臨床例で検討しています。