獣医内科学

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日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

指導教員名:松本 浩毅
職位:教授
学位等:博士(獣医学)
researchmap
E-Rad研究者番号:70453933
ORCID ID:0000-0002-8832-6341
主たる研究テーマ:伴侶動物の臓器連関病態に関する研究
研究キーワード:脂肪酸代謝、酸化ストレス、内視鏡診断治療学、
超音波診断学
場所:D棟2階 獣医内科学研究室
E-mail:matsumoto●nvlu.ac.jp
※●を@マークに変換してください。

研究内容

 診断技術の進歩にともない積極的な治療が展開されるようになってきました。しかし、対象臓器に対する正しい診断に基づく治療が必ずしも全身的な病状を改善できない場合もあります。そのため、私たちは臓器連関に注目しています。例えば、腸疾患が起源となる場合には経口的な抗原の体内侵入が容易となり、過剰な抗原抗体反応を引き起こし腸内毒素の腸管外への流出による全身的な炎症状態を惹起させます。また、心疾患による心拍出量の低下は、腸管への血液還流量を減少させ、その結果として腸管のバリア機能が低下し、炎症物質や炎症惹起物質を血中へ流出させてしまいます。そのため、炎症促進性の脂質メディエーターであるエイコサノイドあるいはレゾルビン、プロテクチンそしてリポキシンなどの炎症収束性脂質メディエーターの基質となる長鎖脂肪酸の変動に注目しています。また、腸内バリア機能維持に重要な因子である腸管内の短鎖脂肪酸の濃度や腸内細菌叢のバランスと全身状態の関係について調査しています。さらに、臓器連関疾患で生じている酸化的障害である酸化ストレス状態を酸化ストレス度と抗酸化能から潜在的酸化ストレス度や相対的酸化ストレス度を算出し、それらの数値を検討しています。  講師の鈴木を中心に心エコー図法を用いた心機能評価の研究も行っています。心不全の病態評価には主に左心系がフォーカスされており、右心系の重要性は十分に認識されていません。また、ヒト医療においては心疾患の診断に心カテーテル検査やMRI検査が頻用されていますが、獣医療ではそれらの検査には全身麻酔を必要とするため実用的な検査方法となっていません。そのため、イヌやネコの心臓病に対して非観血的で麻酔の不要な心エコー図法の有用性についてモデル動物や臨床例で検討しています。

指導方針

 臨床系研究室の特徴を生かし、ラボデータが臨床の場で実用性の高い結果であることを実感できる研究を行います。また、学会発表や論文投稿といった研究データの積極的な公表を目指します。そのためには、データの解析方法や論文の書き方を含む研究に対する計画性、現象や結果の捉え方といった考え方(進め方)に重点を置いて指導します。臨床系大学院生の進路は必ずしも研究職だけでなく臨床へ進むことも多くあります。いずれの進路を選択することになっても社会人として、そして獣医師として社会に貢献できる博士となれるように目標を持った大学院生活を過ごせるような指導を心がけています。

主な学術論文

1.Yuci Y, Suzuki R, Matsumoto. et.al., (大学院生筆頭著者)
Influence of heart rate on right ventricular function assessed by right heart catheterization and echocardiography in healthy anesthetized dogs.
BMC.Vet.Res.2022. 6;18(1):166.
doi: 10.1186/s12917-022-03271-y.
麻酔下の健常犬における右心カテーテル法と心エコー図法による心拍数の影響による右心室機能の評価
2.Niina A, Matsumoto H. et.al., 2021. (大学院生筆頭著者)
Fecal microbiota transplantation as a new treatment for canine inflammatory bowel disease.
Bioscience of Microbiota, Food and Health. 2021. 40(2) 98-104.
doi: 10.12938/bmfh.2020-049.
炎症性大腸疾患犬における新規治療法としての糞便細菌叢移植
3.Yuci Y, Suzuki R, Matsumoto. et.al., (大学院生筆頭著者)
Right ventricular systolic and diastolic function assessed by two-dimensional speckle tracking echocardiography in dogs with myxomatous mitral valve disease.
J.Vet.Med.Sci. 2021. 83(12):1918-1927.
doi: 10.1292/jvms.21-0195.
粘液腫様変性性僧帽弁閉鎖不全症のイヌにおけるtwo-dimensional speckle tracking echocardiographyによる右心室の収縮期と拡張期の機能評価
4.Yuci Y, Suzuki R, Matsumoto. et.al., (大学院生筆頭著者)
Investigation of the influence of manual ventilation-controlled respiration on right ventricular pressure-volume loops and echocardiographic variables in healthy anesthetized dogs.
Am.J.Vet.Res.2021. (11):865-871.
doi: 10.2460/ajvr.82.11.865.
麻酔下の健常犬における右心室圧–容積曲線の用手換気による調節呼吸の影響の調査
5.Niina A, Matsumoto H. et.al., 2019. (大学院生筆頭著者)
Improvement in Clinical Symptoms and Fecal Microbiome After Fecal Microbiota Transplantation in a Dog with Inflammatory Bowel Disease.
Vet Med. Research and Reports. 2019(10) 197-201.
doi: 10.2147/VMRR.S230862.
炎症性大腸疾患犬における糞便細菌叢移植後の臨床徴候と腸内細菌叢の改善
6.Yoshimatsu H, Matsumoto H. et.al., 2016. (大学院生筆頭著者)
Serum Fatty Acid Compositions in Dogs with Mitral Insufficiency.
Advances in Animal Cardiology. 2016. 49(1) 11-16.
doi.org/10.11276/jsvc.49.11.
僧帽弁閉鎖不全症犬における血中の脂肪酸構成

指導教員名:手嶋 隆洋
職位:准教授
学位等:博士(獣医学)
researchmap
KAKEN研究者番号 :80610708
ORCID ID:0000-0001-9646-6785
主たる研究テーマ:間葉系幹細胞を用いた幹細胞治療
研究キーワード:抗炎症・免疫調節・再生医療・間葉系幹
細胞・難治性疾患・炎症性腸疾患・自己免疫性疾患
場所:D棟2階 獣医内科学研究室
E-mail:teshima63●nvlu.ac.jp
※●を@マークに変換してください。

研究内容

 幹細胞を用いた再生医療の発展は目覚ましく、既存の治療法では改善が困難な難治性疾患への応用が期待されています。「間葉系幹細胞」は抗炎症や免疫調節に優れた効果を発揮することから、慢性炎症や免疫異常が密接に関係する自己免疫性疾患を研究対象の中心とし、間葉系幹細胞を用いた幹細胞治療の研究を行っています。そのため、細胞ソースとなる間葉系幹細胞の機能解析~疾患モデルを用いた検討~臨床例に対する治療効果の解析と、研究内容は基礎研究から臨床研究まで多岐にわたります。
 疾患を問わず、間葉系幹細胞を幹細胞治療の細胞ソースとして確立するためには、いかに細胞機能を安定化させるかが重要なポイントと考えています。現在は、ドナー単位とした解析から更に一歩踏み込み、サブポピュレーションさらには細胞単位での機能解析を取り入れ、細胞性能に優れた間葉系幹細胞の選抜を目指しています。

指導方針

 現在、博士課程2年目の大学院生が1名在籍しています。彼は臨床獣医師として勤務するなかで、難治性疾患に対する幹細胞治療に興味を持ったことが大学院生となるきっかけでした。私は、大学院生を受け入れるにあたり、細胞培養をはじめとする分子生物学的な研究の経験は全く求めません。「獣医臨床における幹細胞治療の実現」を目標に、どのようなことにチャレンジしたいのかという目的を持っていることが大切です。また、博士課程4年間の研究業績は当然重要ですが、学位取得時に独立した研究者へと成長させることも指導教員の責務と考えています。そのため、博士課程の研究を通じて、研究者としての本質(研究構想の立案・課題に対するアプローチの方法・失敗への対応など)が身に付くような指導を心がけています。ぜひ一緒に幹細胞治療を研究し、難治性疾患の克服を目指しましょう!

主な学術論文

1.Y. Yasumura, T. Teshima et al., 2023. (大学院生筆頭著者)
Immortalized Canine Adipose-Derived Mesenchymal Stem Cells as a Novel Candidate Cell Source for Mesenchymal Stem Cell Therapy.
Int J Mol Sci. 2023 24(3):2250.
イヌ脂肪由来間葉系幹細胞の不死化細胞を樹立
2.Y. Yasumura, T. Teshima et.al., 2022. (大学院生筆頭著者)
Optimal Intravenous Administration Procedure for Efficient Delivery of Canine Adipose-Derived Mesenchymal Stem Cells.
Int J Mol Sci. 2022 23(23):14681.
生体内への幹細胞投与に適した投与プロトコルの検討
3.T. Teshima, Y. Yasumura et al., 2022. (大学院生共著者)
Antiviral Effects of Adipose Tissue-Derived Mesenchymal Stem Cells Secretome against Feline Calicivirus and Feline Herpesvirus Type 1.
Viruses. 2022 14(8):1687.
ネコ間葉系幹細胞の分泌因子が発揮する抗ウイルス効果の検討
4.T. Teshima, et.al., 2021.
Immunomodulatory Effects of Canine Adipose Tissue Mesenchymal Stem Cell-Derived Extracellular Vesicles on Stimulated CD4+ T Cells Isolated from Peripheral Blood Mononuclear Cells.
J Immunol Res. 2021 2021:2993043.
イヌ間葉系幹細胞由来エクソソームのCD4+T細胞に対する免疫調節作用の解析
5.T. Teshima, et.al., 2020. Generation of Insulin-Producing Cells from Canine Adipose Tissue-Derived Mesenchymal Stem Cells.
Stem Cells Int. 2020 2020:8841865.
イヌ脂肪由来間葉系幹細胞を用いたインスリン産生細胞の作製
6.T. Teshima, et.al., 2019. Comparison of Properties of Stem Cells Isolated from Adipose Tissue and Lipomas in Dogs.
Stem Cells Int. 2019 2019:1609876.
脂肪腫由来間葉系幹細胞の性状解析
7.T. Teshima, et.al., 2018. Soluble factors from adipose tissue-derived mesenchymal stem cells promote canine hepatocellular carcinoma cell proliferation and invasion.
PLoS One. 2018 13(1):e0191539.
イヌ間葉系幹細胞が肝細胞癌に与える効果の解析
8.T. Teshima, et.al., 2017. Allogenic Adipose Tissue-Derived Mesenchymal Stem Cells Ameliorate Acute Hepatic Injury in Dogs.
Stem Cells Int. 2017 2017:3892514.
犬の急性肝障害モデルに対する他家由来間葉系幹細胞の治療効果の解析