獣医放射線学

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日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

指導教員名:藤田 道郎
職位:教授
学位等:獣医学博士
researchmap
KAKEN研究者番号:00238586
主たる研究テーマ:伴侶動物の画像診断および
呼吸器疾患に関する臨床研究
研究キーワード :X線、CT、MRI、画像診断学、
呼吸器病学
場所:D棟2階 獣医放射線学研究室
E-mail:mfujita●nvlu.ac.jp
※●を@マークに変換してください。

研究内容

 臨床研究を主眼としています。今現在興味を持っているのは犬猫の間質性肺炎と猫の慢性気管支炎から悪化した肺気腫です。前者については、ヒト医療の間質性肺炎には原因が明らかな疾患と原因不明の疾患に大別されています。原因不明の間質性肺炎は特発性間質性肺炎と呼ばれ、指定難病となっています。そしてそのヒトにおいて指定難病の間質性肺炎が犬や猫でも発症しています。ヒト医療では聴診、血清マーカーとしてKL-6測定、呼吸機能検査および胸部CTにて診断が下せるが、犬猫ではそのようなクライテリアが無く、臨床徴候や今までの治療経過や胸部X線画像から推測しているため、本疾患と診断がつくまでに時間がかかっています。また、治療についてもステロイドや免疫抑制剤を用いて炎症のコントロールが主体です。それらの治療で奏功する場合もあるが、無効な場合もあり、更なる治療カードの追加が求められています。従って間質性肺炎については診断法の確立と更なる治療法についてヒト医療から学びながら研究をしています。後者の猫の肺気腫についてはヒトのCOPDに類似した病態と考えられていて喘息や慢性気管支炎の進行悪化に伴って発症しています。肺気腫になったら不可逆性となり、予後は厳しいものとなります。しかしながら、全ての猫喘息や慢性気管支炎が肺気腫に進行するわけではないように感じています。
 こちらについてもヒトのCOPDに対する考え方から学びながら研究をしています。

指導方針

 2023年度に入り、私の任期が5年を切るなかでどこまで指導できるか正直なところ、不安があります。しかしながら、先に記した研究内容に興味があり、積極性かつ自発的な活動性もあるなら歓迎します。そして、私が指導するというよりも共同研究という気持ちで一緒に考えながら進んでいければと思っています。そして大学院修了時には、博士として専門分野の知識を有するだけでなく多様な人との協調性が築ける人材に育ってもらいたいと考えています。

指導教員名:藤原 亜紀
職位:准教授
学位等:博士(獣医学)
    獣医師
    アジア獣医内科学専門医(内科)
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KAKEN研究者番号 40709755
ORCID ID 0000-0003-0386-3728
主たる研究テーマ:犬・猫の呼吸器疾患における新規診断法の確立・病態解明に関する研究
研究キーワード:臨床研究、アルゴリズム作成、非侵襲的検査、遺伝子、呼吸器細菌叢、X線検査、超音波検査
場所:D棟2階 獣医放射線学研究室
E-mail:afjig●nvlu.ac.jp
※●を@マークに変換してください。

研究内容

 犬・猫の呼吸器疾患はこれまで一般内科の一分野として、もしくは循環器科の一部として扱われることが主であり、専門とする獣医師は少なく専門診療科を有する大学もごくわずかです。そのため呼吸器疾患に関する研究も少なく、欧米では少数報告は成されていますが、日本国内の呼吸器疾患の発生は人気品種が欧米と異なることから病態を必ずしも外挿できないのが現状です。そのため我々は日本で飼育されている犬・猫における呼吸器疾患の臨床研究を開始しました。また呼吸器疾患の確定診断には全身麻酔処置下での内視鏡検査やCT/MRIなどの画像検査が必要になることも多いものの、全身麻酔のリスクや施設の問題から必ずしも全ての症例で実施できるわけではありません。そのため、これら侵襲的な検査を用いなくても診断できるような非侵襲的検査方法を確立することを目的に、臨床徴候・X線検査・超音波検査を用いた診断アルゴリズムの作成や、血液を用いた気管支・肺疾患バイオマーカーの探索などの研究を行なっております。また病態解明を目的としてこれまでさまざまな鼻腔疾患の細菌叢を評価し、報告を行なっております。今後は気管支や肺疾患における細菌叢の評価も行い、治療への応用を目指します。また学内外の先生方との共同研究も複数行っており、得意分野を互いに分担することや他分野の専門家とディスカッションすることでより研究を広く発展できるよう努めます。

指導方針

 2023年4月現在、2名の獣医学専攻博士課程の大学院生を指導しています。私自身は大学病院で働く獣医師でもあるため、日々の診療で遭遇する疑問点から研究テーマを得ています。犬・猫の呼吸器疾患における新規診断法の確立・病態解明を行うことで、最終的には研究成果を臨床現場へ還元することを目的とします。臨床に即した研究を行うことは大学に籍を置く臨床獣医師の使命であり、実際に診療を行う我々だからこそできる実用的で独創的な研究は臨床獣医学に大きく貢献することができると考えています。研究の成果を学会発表や最終的に学術論文として発表することは、目の前の動物だけではなく、世界中の多くの動物を救うことにつながります。そのため臨床獣医師が行う研究は非常に貴重で有意義なものとなります。またこれら全ての研究は臨床ありきと考えておりますので、同時に最前線の呼吸器病学の専門診療を行うことができる獣医師・研究者の育成を目指します。臨床と研究の両立は非常に多忙ですが、充実した日々を過ごすことができます。診療を最前線で行いつつ、犬・猫の医療の発展のため臨床研究を行うことで一歩踏み込んだ臨床獣医学に携わりたいという大学院生を募集します。

主な学術論文

1. Fujiwara-Igarashi A, Ohshima T., et al., 2024 (筆頭・責任著者)
Retrospective study of 540 cats with respiratory diseases in Japan (2003–2020)
Vet Med Sci, in press, 2024.
2. Nakazawa Y, Ohshima T., et al., 2024 (責任著者)
Relationship between Respiratory Rate, Oxygen Saturation, and Blood Test Results in Dogs with Chronic or Acute Respiratory Disease: A Retrospective Study
Vet Sci, 11(1):27. 2024
3. Nakazawa Y, Ohshima T., et al., 2023 (責任著者)
Construction of diagnostic prediction model for canine nasal diseases using less invasive examinations without anesthesia
J Vet Med Sci,, 85(10) 1083-1093, 2023
4. Kanemoto H, Fujiwara-Igarashi A. et al., 2023 (責任著者)
Retrospective study of feline tracheal mass lesions
J Feline Med Sur, 25(5) 1098612X231164611, 2023
猫の気管腫瘤に関する日本国内他施設横断回顧的研究
5. Nakazawa Y, Ohshima T., et al., 2023 (指導大学院生筆頭著者、2020年獣医学専攻博士課程入学)
Retrospective study of 1050 dogs with respiratory symptoms in Japan (2005-2020)
Vet Med Sci, 9(2):638-644, 2023.
日本で飼育されている犬における呼吸器疾患の疫学調査および品種に着目した回顧的研究
6. Fujiwara-Igarashi A., Yu Y. et al., 2019 (筆頭・責任著者)
Dynamic pharyngeal collapse in three cats with different pharyngeal pathology
J Vet Med Sci, 81(7):1012-1016, 2019
病態が明らかとなっていない猫の咽頭虚脱2症例の症例報告
7. Fujiwara-Igarashi A., Shimizu K. et al., 2017 (筆頭・責任著者)
A cat with suspected laryngeal metastasis with mucosal irregularity resulting from apocrine/salivary gland adenocarcinoma in the head
J Vet Med Sci, 79(12):1916-1919, 2017
喉頭に腫瘍の転移を認めた猫の初の症例報告
8. Fujiwara-Igarashi A., Igarashi H. et al., 2015 (筆頭・責任著者)
Efficacy and Complications of Palliative Irradiation in Three Scottish Fold Cats with Osteochondrodysplasia
J Vet Intern Med, 29(6):1643-1647, 2015
スコティッシュ・フォールドの骨軟骨異形成症に対する放射線治療の長期的な予後を観察し、効果・副作用についての3症例報告
9. Fujiwara-Igarashi A., Igarashi H. et al., 2015 (筆頭・責任著者)
Expression profile of circulating serum microRNAs in dogs with lymphoma
Vet J, 205(2) 317-321, 2015.
犬の高悪性度リンパ腫61症例の血液中microRNAの発現プロファイルの検討
10. Fujiwara-Igarashi A., Fujimori T. et al., 2014 (筆頭・責任著者)
Evaluation of outcomes and radiation complications in 65 cats with nasal tumours treated with palliative hypofractionated radiotherapy
Vet J, 202(3):455-461, 2014
猫の鼻腔腫瘍65症例に対する低分割放射線療法の予後と副作用の検討
11. Fujiwara-Igarashi A., Goto-Koshino Y. et al., 2014 (筆頭著者)
Inhibition of p16 tumor suppressor gene expression via promoter hypermethylation in canine lymphoid tumor cells
Res Vet Sci, 97(1):60-63, 2014
犬のリンパ系腫瘍細胞において、がん抑制遺伝子p16はプロモーター領域のメチル化によって発現が制御されていることを証明
12. Fujiwara-Igarashi A., Goto-Koshino Y. et al., 2014 (筆頭著者)
Prognostic significance of the expression levels of the p16, p15, and p14 genes in dogs with high-grade lymphoma
Vet J, 199(2) 236-244, 2014
犬の高悪性度リンパ腫62症例においてがん抑制遺伝子p16, p15, p14の発現は予後に関連することを証明
13. Fujiwara-Igarashi A., Kobayashi T. et al., 2013 (筆頭・責任著者)
Efficacy of hypofractionated radiotherapy for nasal tumours in 38 dogs (2005-2008)
J Small Anim Pract, 54(2):80-86, 2013
猫の鼻腔腫瘍38症例に対する低分割放射線療法の予後と副作用の検討
14. Fujiwara-Igarashi A., Goto-Koshino Y. et al., 2013 (筆頭著者)
Simultaneous Inactivation of the p16, p15 and p14 Genes Encoding Cyclin-Dependent Kinase Inhibitors in Canine T-Lymphoid Tumor Cells
J Vet Med Sci, 75(6):733-742, 2013
犬のT細胞リンパ系腫瘍においてがん抑制遺伝子p16, p15, p14は欠失によって同時に不活化されていることを証明