研究内容
当研究室では伴侶動物(犬猫)の神経疾患、特には脳疾患について、その病態解、診断法、治療法および予後についての基礎的および臨床的研究を行っています。主たる研究テーマはてんかんであり、現在は特にその外科的治療、すなわちてんかん外科に焦点を当てた研究を進めています。てんかんは脳のあるほぼ全ての動物種において認められる脳の病態生理学的機構であり、獣医臨床においても最も遭遇頻度の高い脳疾患です。私のてんかん研究は、獣医臨床でのてんかん診療に伴い①診断と②治療をベースにして展開しています。①の診断に関する研究としては長時間ビデオ脳波モニタリング(発作症状と脳波異常の関連解析)、広周波帯域脳波測定、先進的なMRI撮像法などを駆使したてんかん発作焦点の同定、およびてんかん原因または関連遺伝子の同定などを行っています。②の治療に関して、犬猫のてんかんは基本的に抗てんかん発作薬による内科的治療が行われるのですが、私達はこの抗てんかん発作薬でも発作コントロールがつかない難治性てんかんに対する治療研究を行っており、それが前述したてんかん外科となります。もちろん、②のてんかん外科を行うためには①の診断技術が極めて重要になってくるので、診断研究と治療研究はまさに車の両輪の様なものです。また当研究室では世界で唯一、家族性側頭葉てんかんの猫家系を系統維持しており、その研究は犬猫のてんかん研究としてはもちろんのこと、ヒト側頭葉てんかんの自然発症モデルとして医学獣医学、国内国外問わず注目されています。この他、犬猫の高齢化と獣医療の発展に伴い遭遇頻度が高くなっている脳腫瘍や認知症(これらもてんかん発作を生じる疾患です)についても診断および内科的・外科的治療の研究を行っています。