研究内容
ネココロナウイルスは世界中の約70%の飼い猫に感染しており、そのうち7~10%の猫が猫伝染性腹膜炎(FIP)を発症します。FIPは腹水や胸水の貯留、神経障害、ブドウ膜炎、化膿性肉芽腫性炎などの症状を伴い、発症すればほぼ100%死に至る感染症です。しかしながら、有効なワクチンがなく、近年著効を示す未認可の薬品が見つかったばかりです。一般に抗ウイルス薬が開発されても、翌年には耐性ウイルスが出現します。このように感染症との戦いには終わりはなく、複数の薬剤を同時に投与する多剤併用療法が最も効果的な手段と言えます。我々は現在に至るまで様々な抗FIP薬を見つけてきましたが、臨床的に有効なものは極わずかです。このため、今後とも新たな抗ウイルス薬を見つけ出し、臨床的にその効果を検証する必要性があります。ネココロナウイルスはCOVID-19より病原性が強く、同じ薬剤を処方しても必ず寛解するとは限りません。これはウイルス複製形式がCOVID-19とは若干異なり、抗ウイルス薬開発のために解明しなくてはならないことが数多くあります。少しでも多くの感染猫を助けられるよう抗ウイルス薬の開発を目標に日々研究しています。