研究内容
近年の森林環境や社会構造の変化は、野生動物の分布域や行動パターンに影響を与え、人との軋轢も増加しています。本研究室が研究対象としているツキノワグマについては、農作物被害や人身被害の軽減が望まれていますが、個体数密度や繁殖力が低く、捕獲圧に対して脆弱な一面を持っています。すなわち、本種の保護管理には、個体群の絶滅と被害の発生という二つの相反するリスクを最小化する「リスク管理」が求められます。長野県軽井沢町周辺では、20年以上にわたってNPO法人ピッキオがツキノワグマの調査を行っており、個体の成長、分散、冬眠などに関する情報が蓄積されてきました。当研究室ではピッキオと共同研究を進め、野外調査を行うとともに、遺伝学や統計学の手法を駆使してデータの解析にあたっています。これら多くの個体数かつ長期的研究の成果は、動物の社会性の進化を理解することに大きく貢献するだけでなく、応用として効果的な保護管理方法の確立にも寄与することが期待されています。