研究内容
ヒトは様々な動物を家畜化し、長年にわたって品種改良を進めてきました。その中でイヌは約1万年前に家畜化されて以降、驚異的な速さで他に類を見ない品種多様性を獲得しました。私は「イヌで乳腺腫瘍発症が非常に多いこと」、「イヌは品種多様性が大きいこと」に関連性を見出し、イヌを乳腺腫瘍発症機構解明および、種の進化速度決定因子のランドマークに出来るのではないかと考え研究を進めています。ヒトで遺伝性乳がん原因遺伝子であるBRCA2という遺伝子は、その変異が乳腺腫瘍発症に繋がります。BRCA2はDNAの2本鎖切断時にRAD51等の相互作用分子と協働し、相同組換え修復を行ってゲノムの安定性を維持しています。相同組換え修復は、配偶子形成時の父母由来染色体シャッフルにも密接に関与しています。乳腺腫瘍が多く、品種多様性に富むイヌはこの機構に特徴があるのではあるのでは?と予測し、関連分子群の相互作用様式の解析と相同組換え効率の数値化と比較を中心に研究を行っています(研究内容イメージ図参照)。
また、伴侶動物の多様ながん関連遺伝子の変異検索と機能解析も行っており、新規の早期遺伝子診断法や治療戦略の開発も行っています。