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【新着論文】新たな右心室パフォーマンス指標を用いてイヌの肺高血圧症をより詳細に読み解く

論 文 名:
Pulmonary Vascular Resistance Estimated by Echocardiography in Dogs With Myxomatous Mitral Valve Disease and Pulmonary Hypertension Probability.
和訳)粘液腫様変性性僧帽弁疾患と肺高血圧症の可能性を有する犬における心エコー図検査による推定肺血管抵抗
著  者:
鈴木 亮平1)、湯地 勇之輔1) *、手嶋 隆洋1)、松本 浩毅1)、小山 秀一1)
1)日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 獣医内科学研究室(*大学院生)
掲載雑誌:
Frontiers in Veterinary Science. 2021; 8: 771726.
Frontiers
doi: 10.3389/fvets.2021.771726.
研究内容:
肺高血圧症は肺動脈圧や肺血管抵抗の上昇を特徴とする難治性疾患であり、右心機能障害や右心拡大、右心不全を引き起こすリスクがあります。医学領域では、右心カテーテル検査により肺動脈圧や肺血管抵抗を測定することで、肺高血圧症の診断、重症度評価を行っています。しかし、獣医学領域ではカテーテル検査を実施するために全身麻酔を必要とするため、容易に実施できないことが問題となっています。肺血管抵抗は、肺動脈圧と右心室の心拍出量から算出されるため、心エコー図検査による肺動脈圧と右心室の心拍出量の推定値を用いて測定可能であり、医学領域ではその推定値の有用性が報告されています。そこで我々は、イヌにおいて最も一般的な心疾患である僧帽弁疾患に続発した肺高血圧症の犬を対象に、心エコー図検査による三尖弁逆流速度(≒肺動脈圧)と肺動脈血流(≒右心室の心拍出量)を用いた推定肺血管抵抗(PVRecho)の有用性を評価しました。本研究において、PVRechoは肺動脈圧の上昇と心拍出量の低下に基づく肺高血圧症の進行により、有意に上昇しました。特に、腹水、胸水貯留や失神などの右心不全徴候を呈する重篤な症例のPVRechoは著明に高値を示しました。本研究結果は、この非侵襲的な指標が肺高血圧症の診断や重症度評価に有用である可能性を示唆しています。

■研究者情報

鈴木 亮平(獣医学部獣医学科 獣医内科学研究室・助教)

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