ニュース news

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

【新着論文】かぼちゃの原産国を果実の粗繊維で判別する

論 文 名:
Potential application of light element stable isotope ratio in crude fiber for geographical origin verification of raw and cooked kabocha pumpkin (Cucurbita maxima ).
和訳)生および調理したかぼちゃ (Cucurbita maxima )の産地判別への粗繊維の軽元素安定同位体比の利用の可能性
著  者:
吉田充1、田端彩菜1、新野拓巳1、知久和寛1、中下留美子2、鈴木彌生子3
1日本獣医生命科学大学 応用生命科学部 食品科学科 食品安全学教室
2国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所
3国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 基盤技術研究本部
高度研究分析センター
掲載雑誌:
Food Chemistry. 373, Part B, 131462 (2022).
Elsevier
doi.org/10.1016/j.foodchem.2021.131462.
研究内容:
 現在、日本におけるかぼちゃの輸入量は国内の流通量の約4割を占め、外国産品と国内産品の価格差のため外国産を国産と偽装する事件が報告され、偽装を見破る産地判別技術の確立が望まれています。そこで、作物の生育地の気候や降雨の影響を受ける軽元素安定同位体比を用いた原産国の判別を試みました。生かぼちゃや水煮カボチャでは、果肉の炭素の安定同位体比(δ13C)と酸素の安定同位体比(δ18O)を組み合わせることにより、日本産と主な輸入先のひとつメキシコ産の判別の可能性が示され、日本産でも生産量が最も多い北海道産に限定すれば、もう一つの主な輸入先のニュージーランド産とも判別が可能であることが示されました(図左)。
 なお、調味料を入れて調理・加工したかぼちゃも売られているため、それらの原料かぼちゃの原産国判別の必要もあります。そこで、かぼちゃの果肉部から粗繊維を抽出して炭素安定同位体比と酸素安定同位体比をみたところ、調味料の影響が除かれて、炭素と酸素の安定同位体比それぞれについて、生かぼちゃから抽出した粗繊維と調理後のかぼちゃから抽出した粗繊維の値が一致しました。さらに炭素の安定同位体比と酸素の安定同位体比に関して、生かぼちゃの果肉部全体と粗繊維の値の間に強い正の相関がみられ、粗繊維を使っても果肉全体を使用した場合と同様に、原産国判別の可能性が示されました(図右)。この粗繊維の安定同位体比を用いた原産国の判別法は、かぼちゃに限らず、各種農産物やその加工・調理品の原産国判別に応用可能な方法です。

▲図 かぼちゃの原産地は果肉全体の炭素安定同位体比(δ13C)-酸素安定同位体比(δ18O)のプロット上(左)でも
粗繊維の炭素安定同位体比(δ13C)-酸素安定同位体比(δ18O)のプロット上(右)でも区別できる

 ※なお、この論文については、本学ダイバーシティ推進委員会による英文校閲費用助成制度を利用して投稿されたものです。

■研究者情報

吉田充(応用生命科学部食品科学科 食品安全学教室・教授)
知久和寛(応用生命科学部食品科学科 食品安全学教室・准教授)

■関連ページ

【新着論文】放射性セシウムを含む大豆から作った豆腐を水に浸けておくと放射性セシウムが豆腐から抜けてゆく