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【新着論文】日本国内の犬の呼吸器疾患における大規模疫学調査:人気品種との関連

論 文 名:
Retrospective study of 1050 dogs with respiratory symptoms in Japan (2005-2020)
和訳)日本における呼吸器疾患を有する犬1050頭の回顧的研究(2005-2020年)
著  者:
中澤 優太、大島 嵩史、藤田 道郎、藤原 亜紀
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科獣医放射線学研究室
掲載雑誌:
Veterinary Medicine and Science, 2022.
doi: 10.1002/vms3.983.
研究内容:
 これまで犬の呼吸器疾患全体においてどのような病気が多いか、どのような品種に好発するかという疫学研究は世界的にも報告されていませんでした。我々は日々の診療において、日本の特定の人気品種にある呼吸器疾患が発生しやすいという印象をさまざまな場面で経験して来ました。しかしながら日本国内での人気品種は欧米とは大きく異なるため、品種と呼吸器疾患の関連性についてもこれまで海外ではほとんど報告がありませんでした。そのため我々は過去に本学付属動物医療センター呼吸器科に来院した犬のカルテデータを元に回顧的研究を実施し、日本の犬の呼吸器疾患ではどのような病気が多いか疫学調査を実施しました。また本学の他の診療科に来院した犬の品種内訳と比較し、統計学的に好発品種の調査を行いました。
 その結果、気管・気管支疾患が全体の33%ともっとも多く認められ、鼻腔(30%)、咽頭(13%)、喉頭(11%)、肺(9%)と続きました。また品種との関連性として、ミニチュア・ダックスフンドは慢性気管支炎や気管支拡張症、非感染性鼻炎が、ポメラニアンやチワワなどの複数の小型品種には気管・気管支虚脱が、フレンチ・ブルドッグやパグ などの短頭品種やポメラニアンには短頭種気道症候群が、ゴールデン・レトリーバーにはアスペルギルス属感染鼻炎が好発であることが明らかとなりました。その他にも複数の疾患において品種との関連性が認められました。本研究から得られた結果は、今後の犬の呼吸器疾患の診療において診断・治療だけでなく、病態解明の一助となり予防にも応用できると考えられます。

■研究者情報

藤原 亜紀(獣医学部獣医学科 獣医放射線学研究室・准教授)