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【新着論文】日本の食肉検査で頻繁に検出される牛の肝病変の謎が明らかに!

論 文 名:
Intrahepatic eosinophilic proliferative phlebitis in Japanese black cattle indicate allergies involving mast cell tryptase-dependent activation.
和訳)黒毛和牛における肝内好酸球性静脈炎は肥満細胞トリプターゼ依存性活性に関連するアレルギーを示す
著  者:
近内将記、髙橋公正、町田雪乃、道下正貴、塚田晃三
日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科 獣医病理学研究室
掲載雑誌:
Frontiers in Veterinary Science 2022 9:972180
doi: 10.3389/fvets.2022.972180.
研究内容:
 健康牛として搬入された黒毛和牛に、特徴的な肝病変が0.4~0.5%の高率で発生し、食肉衛生検査所で検出されると肝臓のみが廃棄されます。この病変は、これまで牛の肝蛭症とされ、肝内好酸球性増殖性静脈炎 (EPP) と命名されました。しかし、国内の牛はほとんど放牧を実施していないことから、肝蛭症が流行る可能性は低く、世界中で発生している肝蛭症の中で、なぜ EPP 症例が日本でのみ発生するのかは不明でした。私達の研究では、アレルゲンのスクリーニング検査で多年草のギシギシ (Rumex crispus) に対する血中抗体価の増加を見出し、この病変の特徴から食物アレルギー疾患の可能性を示唆していました。ギシギシは、温暖な気候地域で、荒れ地、道端、海岸線、森林、野原以外に、手入れの行き届いた農場でも繁茂するため、ギシギシは、農場から収穫された飼料中に混入する可能性が高く、近年、馬のアレルギー性皮膚炎やヒトのアレルギー性鼻炎のアレルゲンとして注目されています。本研究では、肥満細胞の活性化に関する分類に着目してEPP 症例と肝蛭症を比較し、EPP 症例が肝蛭症ではなく、アレルギー性疾患であることを明らかにしました。さらに、本研究は、日本でのみ発生する本病変の謎について、霜降り肉生産のために国内の子牛で実施しているビタミンA制限がアレルギー反応の感受性を高めている可能性を考察しています。

■研究者情報

塚田 晃三(獣医学部獣医学科 獣医病理学研究室・教授)
道下 正貴(獣医学部獣医学科 獣医病理学研究室・准教授)
町田 雪乃(獣医学部獣医学科 獣医病理学研究室・講師)