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【新着論文】東京都市郊外のアライグマにおけるレプトスピラ感染動態に迫る

論 文 名:
Epidemiological Study of Pathogenic Leptospira in Raccoons (Procyon lotor) in a Suburb of Tokyo, Japan
和訳)東京都市郊外に生息するアライグマにおける病原性レプトスピラの疫学研究
著  者:
及能和輝1、加藤卓也1、大坪寛子1、木邊量子2、片岡康2、羽山伸一1
1日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科 野生動物学研究室
2日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科 獣医微生物学研究室
掲載雑誌:
Animals, 2022 Dec 21;13(1):21.
doi: 10.3390/ani13010021.
研究内容:
 日本に生息するアライグマ (Procyon lotor) は特定外来生物に指定されており、現在も生息数の増加と生息分布の拡大が懸念されています。アライグマは農業被害や在来種の補食などの問題以外にも人と動物の共通感染症の拡散といった問題が懸念されています。そこで私たちは東京都市郊外に生息するアライグマを対象に、アライグマが媒介する共通感染症の1つであるレプトスピラ (Leptospira spp.) の保有状況を、遺伝子検査と抗体検査を用いて調査しました。その結果、156頭中31頭 (23.1%) のアライグマからレプトスピラ遺伝子を検出し、165頭中16頭 (9.7%) からレプトスピラ抗体を検出しました。さらに、アライグマの歯牙の萌出と頭蓋骨の縫合線の閉鎖具合から年齢を推定しました。それらの年齢にはアライグマの子が親元から離れる時期 (分散期) が含まれており、分散期にはオスのアライグマはメスよりも早く、より遠くに移動するといわれています。遺伝子検査、抗体検査の結果と性年齢構成の結果から、アライグマの遺伝子陽性率と抗体陽性率は性年齢によって異なり、分散期と関連を示すことが明らかになりました。つまり、アライグマは分散期の移動で感染症を拡散しやすく、オスのアライグマがメスよりも感染症の拡散に強く関わっている可能性があります。アライグマの生態学的特徴を考慮した感染症の研究は非常に少なく、この結果は野生動物における病原体の感染動態の解明に繋がる可能性があります。

■研究者情報

加藤卓也(獣医学部獣医学科 野生動物学研究室・講師)
木邊量子(獣医学部獣医学科 獣医微生物学研究室・講師)
片岡康(獣医学部獣医学科 獣医微生物学研究室・准教授)
羽山伸一(獣医学部獣医学科 野生動物学研究室・教授)