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【新着論文】間葉系幹細胞の均一化が幹細胞治療の実用化の鍵を握る

論 文 名
Heterogeneity of mesenchymal stem cells as a limiting factor in their clinical application to inflammatory bowel disease in dogs and cats.
(和訳)間葉系幹細胞の不均一性は犬や猫の炎症性腸疾患への臨床応用を制限する要因である

著者
手嶋 隆洋
獣医学科 獣医内科学研究室、生命科学総合研究センター 研究部門 再生医療分野

掲載雑誌
Veterinary Journal, 2024 304: 106090
Elsevier
Open access
DOI: 10.1016/j.tvjl.2024.106090

研究内容
 間葉系幹細胞による幹細胞治療は、継続的な治療が必要な炎症性疾患や自己免疫疾患への応用が期待されています。すでに獣医療では国内外を問わず幹細胞治療の導入が始まっており、犬や猫の炎症性腸疾患ではその有効性が報告されています。しかし、幅広い疾患への適用や更なる普及を目指すうえで解決すべき課題もあります。そのひとつは、幹細胞治療に使用する間葉系幹細胞の均一化をどのように図るかです。治療効果を左右する間葉系幹細胞の性状は、細胞の提供元となるドナーや細胞培養の方法などによって影響を受けます。また、一口に間葉系幹細胞と言っても、性状の異なる複数の細胞集団が含まれるため、同一のドナーから採取し同様の方法で準備した細胞であっても、治療効果はその都度異なる可能性があります。治療薬であれば用法・用量を統一することで、均一な治療効果が期待できますが、現在の幹細胞治療は同じ細胞数の間葉系幹細胞を同様に投与しても、治療効果は診療施設ごと更には同一施設内においても違いが生じます。

 新たな治療法として期待が高まる幹細胞治療ですが、真の実用化には「間葉系幹細胞の不均一性」をどのように克服し、「安定的に均一な細胞機能を発揮する間葉系幹細胞」をどのように提供するかが今後求められます。本論文は、犬や猫の炎症性腸疾患に対する幹細胞治療の現状を紹介するとともに、犬の間葉系幹細胞の不均一性をまとめ、我々の研究内容も含めて不均一性を解消する取り組みについて取り上げた総説です。

(文責:手嶋 隆洋)

■研究者情報

手嶋 隆洋 准教授
獣医学部 獣医学科 獣医内科学研究室

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