【新着論文】犬の行動特性に関連する遺伝子を発見!
― 盲導犬育成への新たな一歩へ期待―
- 論 文 名:
- Identification of SORCS1 as a candidate gene associated with canine behavioral traits: Insights from guide dog training outcomes
(和訳)犬の行動特性に関連する候補遺伝子SORCS1の同定:盲導犬の訓練成績からの知見 - 著 者:
- 近江俊徳1,2*、宇田川智野1、加藤由比子1、川上翔太1、宇埜友美子1,3、
落合和彦4、浅野潤三1,5 - 1. 日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医保健看護学科 獣医保健看護学基礎部門(比較遺伝学研究分野)
- 2.日本獣医生命科学大学 生命科学総合研究センター
- 3.University of York, Department of Chemistry, United Kingdom
- 4. 日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 獣医衛生学教室
- 5. 九州盲導犬協会
- *責任著者、所属は研究時在籍を含む
- 掲載雑誌:
- PLOS One 2026. 21(2):e0342346.
doi: 10.1371/journal.pone.0342346 - 研究内容:
- 盲導犬の育成は、盲導犬に適した血統を持つ「繁殖犬」から産まれた子犬を訓練(訓練犬)しますが、最終的にすべての訓練犬が盲導犬になれるわけではありません。その違いはどこから生まれるのでしょうか。 私たちは、九州盲導犬協会の協力を得て、盲導犬として合格した犬と不合格だった犬のDNAの違いを調べました。すると、犬の第28番染色体上にあるSORCS1という遺伝子の「小さな違い」*が、盲導犬の合格率と関係していることがわかりました。 SORCS1は、代謝や神経活動などに関係しています。脳内においては主に神経細胞で働くタンパク質輸送受容体で、細胞内でタンパク質を適切な場所へ運ぶ役割をもつ分子で、神経機能や行動に関係すると考えられています。人ではアルツハイマー病、自閉症との関連が報告されています。また、アカギツネの繁殖研究で、人になつきやすい性質(順化)と関係していることも報告されています。 犬の行動特性は、遺伝的要因だけでなく環境要因も関与しています。そのため、盲導犬への「向き・不向き」が遺伝子だけですべて決まるわけではありません。しかし今回の発見は、盲導犬育成の成績を指標として犬の行動特性という“個性(気質)”を科学的に捉えることで、より効果的な育成や合格率の向上につながる可能性を示しています。本研究の一部は特許を取得しており、今後の実用化が期待されます。 *イントロン3に存在する複数のSNP(一塩基多型)。
-
(文責 近江俊徳)
■研究者情報
近江 俊徳(獣医学部 獣医保健看護学科 獣医保健看護学基礎部門(比較遺伝学研究分野) 教授)
宇田川 智野(獣医学部 獣医保健看護学科 獣医保健看護学基礎部門(比較遺伝学研究分野) 講師)
落合 和彦(獣医学部獣医学科 獣医衛生学研究室・准教授)

