【新着論文】動物愛護・適正飼養へ期待!イヌのDNA型個体識別の研究
- 論 文 名:
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Population genetics for 18 short tandem repeat loci (Canine GenotypesTM Panel 2.1 Kit) of 150 unrelated dogs from three pure-bred groups in Japan
(和訳)短鎖縦列繰返配列18遺伝子座の解析によるイヌ3品種150例の集団遺伝学解析 - 著者:
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國田 吹樹1)†※、宇田川 智野1)†、稲垣 健志2)、鈴木 秀人2)、盆子原 誠3,4)、近江 俊徳1,2*,4)
1) 本学 獣医保健看護学科 獣医保健看護基礎部門(比較遺伝学研究分野)
2) 自治医科大学 解剖学講座 法医学部門
3) 本学 獣医学科 臨床病理学研究室
4) 本学 生命科学総合研究センター
†共同第一著者、※大学院生、*(非常勤講師) - 掲載雑誌:
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Leg Med (Tokyo).,2024 Sep:70:102472
Elsevier
Open Access
DOI: 10.1016/j.legalmed.2024.102472 - 研究内容:
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ヒトにおいてDNA型による個体識別は「DNA型鑑定」として犯罪捜査や身元特定、親子鑑定など、社会に浸透した法医学的検査技術です。動物においても、欧米を中心に動物のDNA型個体識別をターゲットとしたAnimal Forensic Genetics(動物法医遺伝学)の研究が進んでいます。しかし、日本ではまだまだ基礎的な研究データの構築が進んでいません。そこで、本研究では、海外で市販されているイヌの遺伝子型(DNA型である短鎖縦列繰返配列:STRを利用)キットを用いて日本で飼養されている3品種(ゴールデン・レトリバー、ミニチュアダックスフンド、柴犬)計150例の18遺伝子座を解析し、日本における本キットの個体識別能すなわち法医学的な実用性を評価しました。その結果、2個体が偶然一致する確率は極々低く(3.257 × 10−16から2.107 × 10-18)、2個体の遺伝子型が一致した場合は、限りなく同一個体であるといえる客観的データを提示しました (図;左側)。また、得られた遺伝子型を用いて主成分分析を行なった結果、3品種は遺伝的に3つのグループに分かれました(図;右側)。
日本においても残念ながら愛護動物の殺傷、虐待・遺棄などの事案についての報道が増えています。イヌのDNA型個体識別は、このような「動物の愛護及び管理に関する法律」の違反の捜査や犯罪抑止あるいは被災動物の身元特定など社会に有用な技術の一つとして期待されます。
なお、本研究は大学院獣医保健看護学専攻國田氏の修士論文の一部をまとめたもので、日本法医学会が発行する英文誌に掲載されました。
(文責:近江 俊徳)