ニュース news

日本獣医生命科学大学 日本獣医生命科学大学

【新着論文】猫の涙から新しいタンパク質を発見 涙が語る眼の健康状態―犬と猫の涙液タンパク質解析から見えてきたことー

論 文 名:
1) Tear Protein Alteration in Dogs with Keratoconjunctivitis Sicca
(和訳)犬のドライアイは涙の量だけでなく質も変えていた
2) A Pilot Proteomic Analysis of Tear Fluid in Domestic Cats with and Without Conjunctivitis Using MALDI-TOF/TOF Mass Spectrometry
(和訳)結膜炎の猫の涙から見えてきた眼の健康サイン
著 者:
1) 余戸 拓也1)※、寺門 邦彦1)、片山 欣哉2)
2) 余戸 拓也1)※、飯野 章太郎1)、片山 欣哉2)
1. 日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 獣医外科学研究室
2. 日本獣医生命科学大学 全学教育センター 生体分子化学分野
研究代表者
掲載雑誌:
1) Animals Vol_16,160
doi: 10.3390/ani16020160
Impact Factor:2.7
2) Animals Vol_16,912
doi: 10.3390/ani16060912
Impact Factor:2.7
研究内容:
 「涙」と聞くと、目を潤すための水分を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実際には、涙には目を守るためのさまざまなタンパク質が含まれており、その成分は健康状態によって変化することが知られています。
 日本獣医生命科学大学の研究グループは、犬と猫の涙液に含まれるタンパク質を解析し、眼の病気との関係を調べる研究を行いました。
 犬のドライアイ(乾性角結膜炎)は、涙の量が減少し、慢性的な炎症や角膜障害を引き起こす病気です。本研究では、ドライアイの犬では涙の量だけでなく、涙に含まれるタンパク質の構成そのものが変化していることが明らかになりました。特に、炎症や免疫に関わるタンパク質が増加し、目を保護する働きを持つ一部のタンパク質が減少していました。
 さらに猫の研究では、結膜炎を持つ猫と健康な猫の涙液を比較しました。その結果、これまで猫の涙では報告されていなかったタンパク質を発見することに成功しました。これらのタンパク質は、目の表面を感染や酸化ストレスから守る役割を担っている可能性があり、猫の眼疾患の理解に新たな手がかりを与える成果となりました。
 人や動物の医療では、血液や尿を利用した検査が広く行われていますが、涙は採取が容易で動物への負担も少ないことから、新しい診断材料として注目されています。将来的には、涙を少量採取するだけで病気の早期発見や治療効果の判定ができる時代が来るかもしれません。
 犬や猫は言葉で不調を訴えることができません。しかし、その涙の中には健康状態を示す多くの情報が隠されています。本研究は、「涙から病気を読み解く」新しい獣医療の実現に向けた第一歩となる成果です。
(文責 余戸拓也)

■研究者情報

余戸 拓也(獣医学部 獣医学科 臨床獣医学部門(獣医外科学研究室) 講師)
片山 欣哉(全学教育センター 基盤教育部門 (生体分子化学分野) 准教授)