【新着論文】世界自然遺産・奄美大島にすむ希少鳥類に、寄生虫「トキソプラズマ」の感染を初確認
- 論 文 名:
- Toxoplasma gondii infection in the endangered Amami Woodcock,Scolopax mira (Aves:Charadriiformes)
(和訳)絶滅危惧種アマミヤマシギScolopax mira(鳥綱:チドリ目)におけるToxoplasma gondii感染 - 著 者:
- 鈴木 遼太郎1)、常盤 俊大2)、伊藤 圭子3)、鳥本 亮太4)、新屋 惣5)、播谷 亮1)、山本 昌美1)※、吉村 久志1)
- 1. 日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医保健看護学科・病態病理学研究分野
- 2. 日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科・獣医寄生虫学研究室
- 3. 奄美いんまや動物病院
- 4. ゆいの島どうぶつ病院
- 5. 奄美野生動物医学センター
- ※責任著者
- 掲載雑誌:
- International Journal for Parasitology:Parasites and Wildlife,2025 28:101135.
Elsevier
doi: 10.1016/j.ijppaw.2025.101135. - 研究内容:
- 東京から南西へ約1,300kmに位置する奄美大島は、アマミノクロウサギやルリカケスなど、多くの固有種が生息する亜熱帯の島です。豊かな自然が残る一方で、島の野生動物は人間活動による様々な影響を受けています。私たちの研究チームは、奄美大島の動物病院や環境省の施設と連携し、救護された傷病動物や自動車事故などで死亡した動物を対象とした病理学的研究を進めています。このたび、中琉球の固有鳥類であるアマミヤマシギにおいて、寄生虫トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)の感染を初めて確認しました。 本研究では、自動車事故などの原因で死亡したアマミヤマシギを島内各地から収集し、遺伝子検査と組織検査の2つのアプローチにより、トキソプラズマの感染状況を調べました。その結果、調査した個体のうち2個体の脳からトキソプラズマの遺伝子が検出されました(感染率9.1%)。このうち1個体では、免疫組織化学検査と透過電子顕微鏡を用いた解析により、心臓の筋肉の細胞内にトキソプラズマが確認されました。 トキソプラズマは、哺乳類や鳥類に感染する単細胞の寄生虫です。この寄生虫は生活環を完結させるためにネコ科動物への感染が必要であり、ネコの糞とともに排出された虫体が、経口的に様々な動物に感染します。奄美大島では、持ち込まれたイエネコの野生化が確認されており、本研究の結果は、野外でネコからアマミヤマシギにトキソプラズマが感染している可能性を示しています。 アマミヤマシギは、「国内希少野生動植物種」に指定され、国の保護対象となっている鳥類です。今回感染が確認された2個体では、感染による明らかな生体への負の影響は認められませんでした。しかし、調査集団には様々な偏りが含まれる可能性があるため、本種への健康影響については、今後も慎重に評価していく必要があります。 本研究の実施に当たり、「バードリサーチ調査研究支援プロジェクト」よりご支援を頂きました。寄付をいただいた35名の支援者のみなさまに厚く御礼申し上げます。
-
(文責:鈴木遼太郎)
■研究者情報
鈴木 遼太郎(獣医学部 獣医保健看護学科 獣医保健看護学応用部門 病態病理学研究分野・博士研究員)
山本 昌美(獣医学部 獣医保健看護学科 獣医保健看護学応用部門 病態病理学研究分野・教授(ポストアップ))
吉村 久志(獣医学部 獣医保健看護学科 獣医保健看護学応用部門 病態病理学研究分野・准教授)
常盤 俊大(獣医学部 獣医学科 病態獣医学部門 獣医寄生虫学研究室・准教授)

