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第212号:牛の帝王切開実習

獣医学部獣医学科 産業動物臨床学研究室 5年次 井上 拓馬

2019/10/16 更新

 人間や他の哺乳動物と同様に乳牛もミルクを生産するためには子供を産む必要があります。そして子供が大きくなるにつれて段々と母乳は出なくなるため、乳牛は大量のミルクを生産するために再び妊娠して子供を産む必要があります。そのため酪農家では子牛の分娩というものが日常的に行われています。しかし乳牛の分娩はスムーズに完了せずに助産が必要となる場面も多く、家畜の中でも特に難産が起きやすい動物です。この難産の対応も獣医師の仕事のひとつであり、その対処法として時に帝王切開が選択されます。この度は富士山デーリィクリニックの後藤洋先生の御指導の下で実習として帝王切開を実施する機会をいただきました。

 帝王切開では麻酔処置を施した母牛のお腹を開いて子牛を取り出す操作を行います。ただし子牛とは言ってもその体格は大型犬のサイズを軽く上回る大きさであり、その出口を作るためには母牛のお腹を通常よりも大きく切開する必要がありました。そして切開部位から術者は腕を入れて子宮壁越しに子牛の後肢を掴み引っ張り出します。この操作も一聞ではシンプルですが実際にやってみるとなかなか難しいもので、相当な力を要する作業でした。力が入りづらい姿勢で重量のある子牛の身体を引き寄せなくてはならず、さらに子宮や胎膜といった表面が滑りやすい袋に包まれているため、何度も手の中からずり落ちてしまい上手くいきませんでした。最終的にはコツを教えていただき、なんとか自力で切開部位まで引き上げることができました。そして胎子を傷つけないように気を付けながら子宮壁を切開し、子牛を体外に取り出すことに成功しました。そして子牛に対する処置は周りの方々にお任せして私は早速切開した子宮や腹壁の縫合閉鎖に取りかかりました。このとき子宮の癒着が起こってしまうと今後の子宮修復や繁殖成績などに悪影響が出てしまうことが懸念されるため、血液や血餅などは清潔に洗い流し、綺麗な縫合を心掛けました。こうして手術は終了しましたが、今後はこの牛が搾乳牛として健康に生産活動を行えるようにしっかりと経過観察をしていきたいと思います。

 日頃の大学の講義を受けているときや成書を読む際にもその動物や分野について知っているか否かで学習効果には大きな差が出ると思います。私はこの数年間、毎週富士アニマルファームに通わせていただき多くのことを経験し学ばせて頂くことで、最近では日常の勉強が非常に充実したものになっていることを身に染みて感じております。OSCE・CBTも終わりいよいよ臨床実習に臨む時期となりましたが、今後もこの場所で得た数え切れないほど沢山の経験や知識をあらゆる場面で存分に活かしていきたいと思います。この度は貴重な経験をさせていただき本当にありがとうございました。

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