今回私の所属する産業動物臨床学研究室では、吉村牧場長、萩田先生はじめ牧場スタッフの方々のご厚意により、実習牛を用いた第四胃変位整復術のデモ手術を行う機会をいただきました。牧場および研究室の先生方のご指導の下、今回は5年生の佐藤さんと私で執刀させていただきました。
第四胃変位は、第四胃の運動性が低下しガスが貯留することにより、第四胃が正常とは異なる位置に変位してしまう疾患です。第四胃変位は変位する場所によって右方変位と左方変位に分類されますが、今回は左方変位を想定して、立位での右膁部切開によって実施しました。当日は切開部周囲の消毒および局所麻酔を行った後、右膁部中央部を切開し腹腔内に手を入れて腹腔内臓器の位置を確認しました。その後第四胃を切開部付近まで牽引して腹壁に固定し、その後腹膜と筋層、皮膚を縫合し閉腹しました。
過去にも産業動物臨床学研究室では第四胃変位整復術を実施させていただいたことがあり、先輩方が執刀している様子を見学したこともありました。今回は実際に執刀することになり、自分の手技によって目の前の牛に大きな負担をかけてしまうことに重大な責任を感じました。そのため緊張感を持って真摯に手術に臨むことができたと思います。
また見学した際のことを思い出し、教科書等で勉強した内容をもとに実際にどのように進行していくかをあらかじめイメージしてから当日手術に臨んだのですが、実際にはイメージしたように上手く進行していくことができず、自分の実力不足を痛感しました。特に第四胃を牽引する際に、第四胃を触知できても、なかなか切開部付近まで移動させることができず、苦労しました。今回執刀させていただいたことで、やはり何事も経験に勝るものはないと感じました。
第四胃変位は分娩後の乳牛において多く発生しており、私が将来獣医師として診療を行う場合にも第四胃変位罹患牛に遭遇し、整復術を行う機会が多数あるかと思います。そのような手術を学生のうちから経験させていただき、見学しているだけでは学ぶことはできない貴重な体験ができたことはとてもありがたいことだと感じました。今回の経験を糧にして勉強に励んでいきたいと思います。このような貴重な機会を設けていただいた牧場スタッフの方々、ご指導いただいた先生方、手術中にサポートをしてくれた室員、そして実習牛に感謝します。ありがとうございました。