私は管内の農家で子宮還流による体内採卵業務を行っています。牛の受精卵を得るには、牛の体内で作った受精卵を回収する体内受精卵採取がまだ主流で、全国的に広く行われています。一方、牛の生体から卵子を吸引採取する技術(OPU)が生産現場に徐々に広がりつつあります。OPUは体内受精卵作成に比べ過排卵処置が不要であることが魅力です。そして、採卵実施時期や対象牛選定に関しても体内採卵よりも幅が広がります。OPUに興味があっても、OPUを実施するための高価な器財がないとできません。また、農家の牛を使って練習をするのは非現実的です。この度、実際にOPUをする貴重な機会を頂きました。
▲超音波に映し出された牛卵巣。
黒く識別される卵胞に針を刺して、卵子を採取する。
熟練者のOPUを見学したことがあり、次々と簡単そうに卵子を吸引していましたが、実際にエコーを見ながら採卵針を卵胞に刺して吸引するという動作は考えていたよりも難しく困難を極めました。実際に自分でやってみると難しい!当初は、3回でできるようになるのか?と不安を覚えました。座学で理論が分かっていても、実践はまた別で、卵胞が見えていても吸えない、もどかしい思いをしながらの体験でした。まだまだ修得したと言い切ることはできませんが、感覚が掴めるようになりました。
▲実体顕微鏡下で卵子を捜索中。
▲採取した卵子は大学に輸送した後
体外受精卵が生産される。
計8頭の黒毛和種から合計70個の卵子が採取でき、これを大学に持ち帰り、体外受精と体外培養を経て正常な受精卵が計10個生産出来ました。また、OPUは体内胚を採取する前の卵胞の除去としても有効な手段になるので、今後の効率的な黒毛和種の胚生産に利用したいと考えています。8月4日にガラス化保存した受精卵を移植したとのことで、受胎することを祈っています。今回の研修でOPUのハードルが少し低くなったので、これを足がかりにして今後も精進したいと思います。機会をご提供いただいた牛島先生はじめ研究室の学生さん、アニマルファームの皆様に感謝申し上げます。
▲生産した体外受精卵
7/25にガラス化保存後、8/4に移植し、経過観察中。